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αリノレン酸を手軽に摂取できる調味料はマヨネーズ

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何かと健康面で悪者扱いされる脂質。でも、脂質の中でも積極的に摂取することが推奨されている脂肪酸があります。その代表がαリノレン酸ですね。

私は、αリノレン酸よりも飽和脂肪酸の方が圧倒的に重要だと思っているのですが。

それは、とりあえず脇に置いておきましょう。αリノレン酸を多く含んでいる油として有名なのが、えごま油と亜麻仁油です。どちらかの油をスプーン1杯摂取すれば、1日に必要とされているαリノレン酸を補給できるということで、最近、注目されていますね。

でも、えごま油や亜麻仁油よりも、マヨネーズの方が手に入りやすく、手軽にαリノレン酸を補給できることは意外と知られていません。

1日に必要なαリノレン酸は約2グラム

厚生労働省の日本人の食事摂取基準2015年版によると、成人男性のオメガ3系脂肪酸の1日の食事摂取基準は2.0グラムから2.4グラムとされています。成人女性の場合は、1.6グラムから2.0グラムです。

αリノレン酸は、人間が必ず食事から摂取しなければならない必須脂肪酸でオメガ3系脂肪酸に分類されます。また、αリノレン酸は、体の中でドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)を作る材料ともなります。これらの脂肪酸は青魚に多く含まれており、食べると頭が良くなるとか言われていますね。

 

αリノレン酸を摂取しようと亜麻仁油やえごま油をスーパーに買いに行っても見当たらないという方も多いのではないでしょうか?

私も近所のスーパーに探しに行ったのですが、見当たりませんでした。そこで、通販サイトで調べてみると、意外と値段が高く、こんなもの毎日飲んでられないですね。

マヨネーズのような脂質の多い調味料で十分

別にえごま油や亜麻仁油じゃなくても、αリノレン酸はマヨネーズに意外と多く含まれているので困ることはありません。

1回の使用量12グラム当たり約500mg含まれていますから、1日2回の使用で必要量の約半分を補給できます。残り半分は魚や肉を食べれば何とかなるのではないでしょうか?

また、αリノレン酸は、脂質の多い調味料に多く含まれている傾向にあります。フレンチドレッシング1回分にも360mg含まれていますから、マヨネーズと使い分けると良いでしょう。参考にマヨネーズ、フレンチドレッシング、牛脂、ラードに含まれる主な脂肪酸をまとめておきました。

マヨネーズの各脂肪酸含有量

なお、上記表はカロリーSlismを基にして作成しました。

カロリーオフとか脂質ゼロを謳っている調味料には、αリノレン酸は含まれていないので、利用価値なしですね。和風のドレッシングは、ほとんどが脂質ゼロなので栄養の補給になりません。

オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸の摂取量を同等にするのが理想と言われるが

オメガ3系脂肪酸とリノール酸に代表されるオメガ6系脂肪酸の摂取比率を1:1にするのが理想だと、健康番組でよく言われています。

私は、何となく怪しい気がします。

厚生労働省の日本人の食事摂取基準2015年版では、オメガ6系脂肪酸の摂取量は成人男性で8グラムから11グラム、成人女性が7グラムから8グラムとしています。なお妊娠中と授乳中の女性は9グラムです。

オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸の摂取量を1:1にするためには、オメガ3系脂肪酸を4倍から5倍多く摂取するか、オメガ6系脂肪酸の摂取量を2割程度まで減らすかのどちらかになります。

オメガ3系脂肪酸は健康に良いと言われており、オメガ6系脂肪酸は過剰摂取になっていてアレルギーの原因だという指摘があります。それなら、オメガ6系脂肪酸の摂取量を減らす方が良さそうですが、厚生労働省が約10グラムのオメガ6系脂肪酸の摂取基準を設けていますから、オメガ3系脂肪酸を増やすべきなのでしょう。

 

しかし、食事摂取基準2015年版には、「リスクに対する科学的 根拠が不十分なため、目標量(上の値)も算定しなかったが、α─リノレン酸多量摂取の長期間の影響はよく調べられていないので、過剰摂取には注意が必要である。」との記述があります。

これって、どこかで聞いたことがあるセリフではないでしょうか?

そうそう、糖質制限否定派の方々が、糖質制限は長期的予後がわからないので将来の安全性はわからないと言っているのと同じ理屈ですね。でも、糖質制限に否定的な医師の方でも、αリノレン酸の多量摂取が長期的にどのような影響を与えるかわからないとは言わず、αリノレン酸は健康に良いとばかり言っています。

 

「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉があるので、2グラムで十分なものをたくさん摂取する必要はなさそうです。オメガ3系脂肪酸もオメガ6系脂肪酸も不飽和脂肪酸なので酸化しやすく、血液をドロドロにすると言われていますからね。

とりあえず、毎日、マヨネーズを使っておけば、αリノレン酸の補給は問題ないでしょう。


GI値を意識した食事はお酒を一気飲みするか少しずつ飲むかと同じ発想

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ダイエットに限らず、体全体の健康のことを考えると、血糖値が上昇する食事は控えるべきです。

具体的には、米、パン、麺類、イモ類、砂糖など、糖質が多く含まれている食品を食べると血糖値が上がってしまうので、こういった食品を毎日3回食べるのは好ましくありません。糖質が多く含まれている食品は、一切口にしないのが理想ですが、なかなかやめられないという人も多いでしょう。だから、1日1食だけでも米、パン、麺類を一切食べないようにすることから始めるのが簡単です。

そして、糖質が含まれていても血糖値の上がり方が緩やかな食品があるので、糖質を摂取する場合は、血糖値が急激に上がりにくい食品を食べるのが良いと言われています。

GI(グリセミックインデックス)値の低い食べ物

上述したように糖質が多いものを食べると血糖値が上がります。

高血糖は体に負担がかかるので、すい臓からインスリンが追加分泌され、正常な範囲まで血糖値を下げます。この時、インスリンは血糖を脂肪に変えて体に取り込みます。だから、糖質の多いものを食べると脂肪がつきやすくなり、それが肥満の原因となるのです。

脂質の多い食事をすると太ると勘違いしている方が多いですが、脂質よりも糖質を摂取した方が圧倒的に太りやすいのです。

また、糖質の多い食事をして血糖値を上げ、それをインスリンが下げるということを頻繁に行っていると、やがてインスリンの効きが悪くなったり、すい臓が疲れてインスリンの分泌が悪くなったりします。こうなると、高血糖の状態が継続してしまいます。この高血糖が持続する状態が糖尿病です。

だから、肥満や糖尿病の予防のためには、糖質を多く含む食べ物を頻繁に食べるべきではないのです。

 

急激に血糖値が上がるとインスリンが大量に分泌されることから、糖質が含まれていても血糖値が一気に上がりにくい食べ物を食べることが推奨されています。そして、血糖値の上がりやすさを数値化したものをGI(グリセミックインデックス)値といいます。

同志社大学医学部教授の米井嘉一先生の著書「早く老ける人、老けない人」に日本医学出版の「糖尿病キーワード改訂第2版」に掲載されている各食品のGI値を示した表が載っていたので、以下に示します。

各食品のGI(グリセミックインデックス)値

上の表は、グルコース(ブドウ糖)を摂取した時の血糖値の上がる早さを100%とした場合、それ以外の食品がどの程度のスピードで血糖値を上げるかを表しています。

ニンジンは急速に血糖値を上げそうなイメージはないですが、GI値が80~89%となっていますね。白米も70~79%で高めです。血糖値を急激に上げにくいと言われている玄米でも60~69%で白パンと同じなのですから、血糖値の観点から見ると、健康に良い食べ物とは言えませんね。

豆類は比較的GI値が低く大豆とピーナッツは10~19%と最も低くなっています。

GI値はまやかし

GI値のことを知ると、健康に良い食生活を送るためにGI値の低い食品を中心に食べようと思ってしまいます。

でも、GI値が高くても低くても糖質を摂取することには変わりありません。テレビ番組を見ていると、GI値の低い食品、例えば精製されていない食品は健康に良いと紹介されることがありますが、非常に怪しい情報です。

そもそも血糖値が上がりやすいとか上がりにくいとかいう以前に糖質を摂取していることが問題なのです。でも、GI値が低い食品は健康に良いと述べている方々は、糖質は人間が生きていくために必ず摂取しなければならない栄養だと思い込んでいるのでしょう。だから、糖質を摂取しないように指導するのではなく、GI値が低い食品を食べることを推奨しているのだと思います。

 

GI値というのは、お酒の飲むスピードと同じです。

よく春になると大学1年生が急性アルコール中毒になって、救急車で病院に搬送されたなんていう記事を読むことがあります。記事の内容を詳しく読んでいくと、先輩にビールの一気飲みを強要されたことが原因だと書かれていたりします。

ビールを一気飲みすれば肝臓への負担が大きくなるでしょう。でも、ビールを少しずつちびちびと飲んでいれば健康に良いということではないですよね。一気飲みしようが、ちびちび飲もうが、同じ量だけビールを飲めば肝臓が処理しなければならないアルコールの量も同じなわけです。

 

GI値の発想は、お酒を一気飲みせず少しずつ飲みましょうと言うのと変わりません。

GI値の低い食品から糖質を100グラム摂取するのと、砂糖を10グラム食べるのなら、普通に考えれば砂糖10グラムの方が糖質摂取量が少ないので、体への負担は少なくて済むはずです。でも、GI値を重視する人たちは、砂糖10グラムよりもきっと1日2食玄米を食べて糖質100グラム摂取する方が健康的だと言うでしょうね。

騙されてはいけませんよ。

 

GI値を意識する前に糖質の摂取量を意識すべきなのです。

その上で、GI値を参考にするべきなのですが、そもそも糖質制限をしていればGI値を見なくても良いですし、知る必要もありません。

ビールを一気飲みするよりも、ちびちび飲めば健康的だなんて言うよりも、ビールを飲まない方が健康に良いことは誰だってわかっています。結局、GI値はまやかしに過ぎないのです。

参考文献

グルコースが主要エネルギー源でないのは1ヶ月間不食で生きられることから明らか

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俳優の榎木孝明さんが、1ヶ月間水のみで生活する、いわゆる不食を実施していたことが話題となっています。

飴や塩飴などを食べることもあったそうですが、基本的には1日に1リットルから2リットルの水だけしか体に入れていなかったそうです。コーヒーとお茶なんかもありだったそうですが、1ヶ月間はほとんど水分補給だけということです。

あれ?人間の主要エネルギー源はグルコース(ブドウ糖)と言われているのになぜ1ヶ月間も、ほとんど糖質を補給せずに榎木さんが生きられたのか不思議ですよね。

人間は糖質摂取が必要ない生物

その答えは簡単です。人間は糖質摂取を必要としない生き物だからです。

つまり、グルコースが主要エネルギー源だという考え方が間違っているのです。人間は、糖質(グルコース)をグリコーゲンという形で、肝臓に100グラム程度、筋肉に300グラム程度蓄えることができます。ただし、筋肉に300グラムのグリコーゲンを貯蔵できるのは、筋肉質のムキムキの人です。一般人だと、そんなにも筋肉にグリコーゲンを蓄えれません。

肝臓と筋肉合わせて400グラムのグリコーゲンを蓄えれたとしても、1,600kcalしかありません。成人男性の1日の基礎代謝量が1,500kcalほどあるので、食事から糖質を補給しなければ1日で枯渇する量です。

しかも、筋肉に蓄えられたグリコーゲンは筋肉が利用するためのもので、他の部分に融通することができません。そうすると、肝臓に蓄えた100グラムのグリコーゲンだけで人間は活動しなければなりませんが、それは無理でしょう。

そのような危ういエネルギー源である糖質を主要なエネルギー源だと解釈するのは、どうなのでしょうか?

1ヶ月間水分摂取のみだと何をエネルギー源とするのか?

榎木さんが1ヶ月間水分摂取のみで生き続けたということは、グルコース以外の物質をエネルギーに使ったと考えられます。わずか100グラムのグリコーゲンで、1ヶ月間、活動できないでしょうからね。

この場合、グリコーゲンではなく中性脂肪を主に利用して活動していたと普通なら考えます。

体重50kg、体脂肪率20%の場合、単純に計算すると体内の中性脂肪の量は10kgとなります。脂質は1グラム当たり9kcalですから、中性脂肪10kgだと9万kcal分のエネルギーを生み出すことができます。成人男性の60日分の基礎代謝量に相当します。

榎木さんが、1ヶ月間水分しか摂取しなくても生きていられたのは、中性脂肪を活動のためのエネルギーとして利用していたからではないでしょうか?仮に榎木さんが不食前に10kgの中性脂肪を持っていたのなら、30日間の不食でも、まだあと30日分のエネルギーを体内に残していることになりますね。

これなら、榎木さんが1ヶ月間の不食を終えて元気でいることに納得できます。

脳はケトン体もエネルギー源にできる

よく脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖(グルコース)だと言われます。

これが事実なら、榎木さんの脳は不食開始後まもなく機能停止していたでしょう。肝臓に蓄えていたわずか100グラムのグリコーゲンしか使えないのですから。

でも、榎木さんの脳が機能停止しなかったのは、人間の体には脂質とタンパク質からグルコースを生み出す糖新生という機能が備わっているからです。糖新生は、成長ホルモンなど様々なホルモンが分泌されると行われます。そして、糖新生で生み出されたグルコースを脳や赤血球は利用できるのです。

また、脳は脂肪酸が分解されてできるケトン体もエネルギー源として利用できます。これについては様々な書籍で解説されています。その中から栄養学博士の川島由起子先生監修の「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」の該当箇所を引用します。

脳は、エネルギー源として脂肪酸が使えず、基本的にはグルコースのみを使う。しかし、飢餓などの非常事態には、脂肪酸が分解されて生じるケトン体(アセト酪酸やβヒドロキシ酪酸)もエネルギー源として利用できる。(80ページ)

しっかりと栄養学の本にも、脳がケトン体を利用できると書かれているのです。「飢餓などの非常事態」となっていますが、要は体内のグルコースが減ってくると、脳はケトン体も利用し始めるということでしょう。

 

よく脳がエネルギー源にできるのはグルコースのみだから、糖質をしっかりと摂取しなければならないと言われます。中には、疲れた時には体が吸収しやすい砂糖を摂取して、脳にグルコースを送ることが大切だと述べている人もいますが、これは論外ですね。

血糖値は、血液1デシリットルあたり100ミリグラム程度に維持されていますので、大量に砂糖を食べたとしても、すい臓からインスリンが追加分泌されて、上昇した血糖値を1デシリットルあたり100ミリグラムまで下げようとします。だから、砂糖を大量摂取しても、脳が活発に働くことはないでしょう。

むしろ、糖質を過剰に摂取していたら糖尿病になってしまうので、極力控えた方が良いのです。

 

榎木さんが1ヶ月間の不食を終えたことは、脳がグルコースのみをエネルギー源としていないことを証明したようなものですね。

ちなみに榎木さんは1ヶ月の不食で80kgから71kgまで体重が減ったそうです。

参考文献

日本人は標準体重でも栄養不足かもしれない

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現代日本で、食べるものに困るということは、そうそう起こりません。飽食の時代とも言われていますから、よほどのことがない限り、餓死することはないでしょう。

だから、多くの日本人が栄養が足りていると思っているわけですが、どうもそれは怪しそうです。むしろ、多くの日本人が低栄養状態にあるような気がするんですよね。

たんぱく質・エネルギー低栄養状態(PEM)

栄養学博士の川島由起子先生監修の「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」で、たんぱく質・エネルギー低栄養状態について解説されています。これは、PEM(protein-energy malnutrition)とも言われており、痩せ、浮腫、低体温、免疫力の低下といった症状が現れます。

PEMには、クワシオルコル、マラスムス、両者の混合型があり、臨床の現場では混合型が最も多いそうです。

クワシオルコルは、エネルギーは足りているものの、たんぱく質が著しく欠乏した状態で起こる低栄養状態です。一方のマラスムスは、エネルギー、たんぱく質の両方が長期にわたって不足した結果起こる低栄養状態です。

両者を比較したのが下の表です。

クワシオルコルとマラスムスの比較

マラスムスは、脂肪も筋肉も少なく、外見からもあきらかに痩せているとわかります。この状態になれば周囲も低栄養状態だと気付くでしょうから、本人にもっと食べろと言えば、栄養状態が改善されそうに思えます。

私が問題だと思うのは、クワシオルコルの方です。

前掲書の13ページにクワシオルコルとマラスムスのイラストが掲載されているのですが、クワシオルコルの場合は、服を着た状態だと、ごく標準的な体形に見えるはずです。でも、服を脱げば全体的に筋肉量が少なく、お腹周りに脂肪が付いているので、体重は標準を維持しているものの、なんとなく太ってるように見えます。

日本人はクワシオルコルだらけじゃないの?

PEMは、発展途上国では今も深刻な問題なのですが、日本でも悪性腫瘍、肝硬変患者、高齢者に見られるそうです。高齢者だと、感染症や合併症を超しやすく、筋肉減少で日常生活動作が低下し、寝たきりにつながりやすいとのこと。

最近では、ロコモティブシンドロームという筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器に障害が起きて日常生活に支障をきたす状態が問題視されていますが、これも運動不足よりも低栄養が大きな要因なのではないでしょうか?

特に日本人は、クワシオルコルが多いように思えます。

カロリーの60%を炭水化物で補給し、肉を控えめにしましょうといった栄養指導が今でも行われていますが、これがまさにクワシオルコルになる原因でしょう。

米や小麦ばかりを食べていては、糖質の過剰摂取になり、お腹周りに脂肪がつくのは当たり前です。それでも、肉もたくさん食べていれば同時に筋肉も付くでしょうから、低栄養状態にはなりません。でも、米や小麦でお腹を満たし、肉を控えて野菜中心の食生活をしていれば、タンパク質の補給量が絶対的に不足するはずです。

そうすると、筋肉は少ないのにお腹周りには脂肪が付いているクワシオルコルの状態になりやすいはずです。それでも、体重は標準体重を維持しているので、自分が低栄養状態にあることは気づきません。糖質を過剰摂取していた時の私が、まさにクワシオルコルだったと思います。

体重は標準だったのですが、筋肉量が少なく脇腹に脂肪が付いていました。

そして、糖質制限を開始すると、今度はエネルギーも不足する状態となりました。これは、マラスムスでしょう。

現在は、糖質制限をしながらタンパク質と脂質を多めに食べるように努力をしていますから、低栄養状態を改善しつつあります。でも、まだBMIが18.5なので、ギリギリ標準体重を維持できているかどうかといったところです。

 

よく痩せているよりも小太りの方が長生きをすると言われます。これは、おそらく標準体重の人でも、炭水化物(糖質)中心の食生活をしていてクワシオルコルの状態になっているから、小太りの人よりも早死にするのでしょう。

一方の小太りの人は、糖質の過剰摂取になっているものの、タンパク質や脂質といった体の土台をつくる栄養素をしっかりと補給しているから、痩せ型の人よりも長生きなのではないでしょうか?

そう考えると、低栄養状態から脱出し健康的な体をつくるためには、糖質摂取量を極端に少なくし、タンパク質と脂質の摂取量を大幅に増やして標準体重を維持する必要がありそうです。

 

なお、「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」は、Amazonで前半部分を読むことができます。第2版だと13ページにクワシオルコルとマラスムスのイラストが掲載されているので、一度ご覧になると良いでしょう。

参考文献

夏はアイスクリームではなくバターを食べて糖質摂取量を制限する

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夏になると暑さで食欲がなくなり、ざるそばや冷やし中華のようなさっぱりとしたものを食べたくなります。また、間食時には冷たいかき氷やアイスクリームなんかにも、ついつい手が伸びそうになりますね。

私は、糖質制限をしているので、これらの食べ物に手が出るということはありません。むしろ、そばなどの麺類には糖質が過剰に含まれているので、食べれば逆に体が疲れやすくなります。ただ、暑さを何とかしようと、冷たい物を食べたくなることはあるのですが、そういった時でも、冷たい麦茶なんかを飲んで暑さを和らげています。

バニラアイスのようにバターを食べる

しかし、昔を思い出してバニラアイスを食べたくなることが、たまにあります。バニラアイスと言わず、カラフルなシロップがかかったかき氷なんかも夏になると食べたくなりますね。おそらく、私だけでなく糖質制限をされている方の中には、アイスクリームを食べたくなった方がいらっしゃるでしょう。

そういう方に試してもらいたいのがバターです。

バターをどうするのかと言うと、そのまま食べるのです。バターは脂質が多いので、気持ち悪くなるんじゃないかと思うでしょうが、私の場合はそんなことはないですね。食感はバニラアイスとほとんど同じです。違うのは塩味と言うことくらいでしょうか。むしろ、バニラアイスよりも食感はバターの方がいいですね。

私は特に冷やしてはいませんが、食べる前に冷凍庫に1時間ほど入れておけば、バターが冷たくなって本格的なアイスクリームのように食べれるのではないでしょうか?

夏の便秘予防にもなる

夏になると、知らず知らずのうちに体内の水分量が少なくなっているせいか、便通が悪くなることはありませんか?

なんか腸内まで水分不足になっているような感じで、便が乾燥したように硬くなっている感覚。もしも思い当たる方は、脂質の摂取不足でしょうね。そういう方こそ、アイスクリーム代わりにバターを食べると良いでしょう。

バターには、100グラム中80グラムほどの脂質が含まれています。しかも脂肪酸総量の約70%が飽和脂肪酸というすばらしい脂肪分です。サラダ油やキャノーラ油のような植物油に多く含まれている不飽和脂肪酸は酸化しやすいので、良質な油脂とは言えません。不飽和脂肪酸にはαリノレン酸やリノール酸といった必須脂肪酸も含まれていますが、これらの脂肪酸も酸化しやすいので、摂り過ぎには注意が必要です。

 

便秘予防には食物繊維をたくさん摂ることが重要だと言われますが、私が自分の体で試したかぎりでは、食物繊維は便の量を増やしますが、便通をスムーズにする効果はないように思います。便通の悪さに悩んでいる方は、食物繊維よりも脂質をたくさん摂取することを考えましょう。バターなら、牛脂やラードをそのまま食べるよりも食べやすいです。

よつ葉バターがカップに入っているので食べやすい

バターなら、何でも構わないでしょう。ホテルで使っているような高級なバターでも、よく知らないメーカーの安いバターでも、とにかくバターであれば私は気にせずに食べます。

ただ多くのバターが、200グラムの固まりが銀紙に包まれていて、紙のケースに入っていますから、食べにくいという欠点があります。大体、パッケージのデザインは、どのメーカーのバターも黄色の長方形ですよね。

でも、よつ葉バターは、アイスクリームのようなカップに100グラム入っているので、とても食べやすいです。スーパーで購入するときは、アイスクリーム用のスプーンをもらって、それでバターをすくって食べています。まさにバニラアイスを食べているような気分でありますよ。

味は塩味なので、バニラアイスとは違いますけどね。

また、よつ葉バターには発酵バターもあります。こちらは、普通のバターよりも塩分が少ないので、塩味が控えめです。ほのかに発酵食品独特の香りも漂ってくるので、ヨーグルトやチーズが好きな方なら、発酵バターが美味しく感じるかもしれませんね。

私の近所のスーパーでは、よつ葉バターは258円(税別)で売られています。発酵バターは295円(税別)と少々高めです。

糖質制限中でアイスクリームが恋しく感じた方は、バターを食べてアイスクリームを食べた気になってはどうでしょうか?無塩バターに血糖値を上げないラカントSのような甘味料を加えれば、よりバニラアイスに近づくかもしれませんね。でも、糖質制限に慣れるためには、甘味料を使わない方が良いですよ。

 

それにしても、バター不足は何とかならないものでしょうか?

バターの輸入量は、農畜産業振興機構という組織が、国内の需要量を予測して決めているそうですが、需要予測を誤れば国内の供給量が不足してしまいます。おそらく、国内の酪農家保護といった目的があるのでしょうが、それなら、バターに関税をかければ良いと思うのですが。そうすれば、商社が儲かりそうな分だけバターを輸入して、国内需要と供給量が一致して、消費者も喜びそうなものなんですけどね。

バター不足のせいで高額な値をつけて販売している業者もいますが、問題の本質はバターの輸入量をひとつの組織が決定していることにありそうです。

炭水化物を食べれば簡単に10kgくらいは太ることができる

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先日、あるテレビ番組を見ているとモデルのIVANさんが出演されていました。

その番組は、IVANさんの過去の失敗談を語るというもので、モデルからホームレスに転落した話をされていました。現在は、ホームレスから復帰されて芸能界で活躍されています。

IVANさんの失敗談を聴いていると、いろいろと考えさせられることがあったのですが、私はほんの少しだけIVANさんが語った「炭水化物を食べたら10kg太った」というところで耳が大きくなりました。

7年間炭水化物を食べなくても人間は死なない

IVANさんは、ホームレスになる前のモデル時代、7年間、炭水化物を一切食べなかったそうです。

モデルとして活躍するためには、体型を維持しなければならないので、太りやすい食事は控える必要があったのでしょうね。おそらく、IVANさんだけでなく、他のモデルの方も体型維持のために炭水化物(糖質)を控えているのではないでしょうか。でも、モデルの方が糖質制限をしているといったことをあまり聞きません。

ライバルが次から次に現れるモデルの世界ですから、体型維持に有効な糖質制限を門外不出の秘策として誰にも教えないようにしているのかもしれませんね。

糖質制限の安全性は2年までと言っている医師の方がいますが、IVANさんは7年間も糖質制限をして元気だったのですから、2年以上炭水化物を食べなくても人間は死なないということです。むしろ、炭水化物中心の食事の方が健康に悪影響を与えるのです。

数ヶ月のホームレス生活で10kgの体重増加

モデルの世界から転落したIVANさんは、ホームレスとして生きていくことになり、これまで一切食べなかった炭水化物も口にするようになりました。

食料にいつありつけるかわからないホームレス生活ですからね。食べれるものなら何でも食べないと生きていけません。

IVANさんは、ホームレスの師匠のもとで厄介になりながら生活をしていたわけですが、ボランティアの方の炊き出しや差し入れた食品を食べる機会もあったそうです。ボランティアの方が差し入れた食品は、おにぎりや牛乳といった糖質が多く含まれているものもあり、IVANさんは、そういった物を食べる生活を続けていると10kgも体重が増加したとのこと。

確かホームレス生活は4ヶ月と語っていたので、1ヶ月で2kg以上太っていったことになります。

ホームレスになれば、自由に食事をする機会がないでしょうし、十分な食事量を確保するのも難しいのではないでしょうか?

そのような環境でも、炭水化物中心の食事をしていたら10kgも太るのですから、ごく一般的な仕事をしている方が、毎日3食、米、パン、麺類のいずれかを口にしていては痩せることなんてできないでしょう。体重を増やさないように現状維持することも困難でしょうね。

結局、IVANさんは、炊き出しの列に並んでいる時に熱中症で倒れたことで死の危険を感じ、ホームレス生活をやめたそうです。

 

熱中症になるのは、水分や塩分補給がおろそかになっていたり、長時間直射日光を浴び続けたからでしょうが、短期間とは言えホームレス生活で栄養状態が悪化したことも体調を崩した原因なのかもしれません。

そのような栄養不足の状態でも、炭水化物を食べていると体重が増えていくのですから、米や小麦の動物を太らせる効果に驚きです。

健康を維持するためには、米、パン、麺類のような炭水化物(糖質)が多く含まれている食品で空腹を満たすのではなく、肉や卵など脂質とタンパク質中心の食事をしなければならないということでしょうね。

2015年9月18日追記

同じ番組で、炭水化物を食べれば20kg太ることが詳細されていました。

飽和脂肪酸を多く摂取しても脳卒中の原因にはならない

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飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪をたくさん摂取していると、脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血といった脳卒中を起こしやすいと言われています。心筋梗塞も、動物性脂肪の摂り過ぎが原因だとも。

でも、飽和脂肪酸をたくさん摂取したからと言って、脳卒中や心筋梗塞になるという証拠はありません。むしろ、飽和脂肪酸を多く摂取している方が健康に良いくらいです。

意図的に作られた飽和脂肪酸害悪説

飽和脂肪酸を健康に悪いものだと結論付けたのは、アンセル・キーズというアメリカの栄養学者です。

キーズ先生は、1950年代に7ヶ国を対象に疫学調査をして、飽和脂肪酸が心筋梗塞を引き起こすという結論を導き出しました。現在の飽和脂肪酸害悪説は、キーズ先生の疫学調査が発端となっているようです。

ところが、キーズ先生の研究は非常に怪しいものです。これについては、脂質栄養学を専門とされている浜崎智仁先生の著書「コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる」で簡単に説明されているので引用します。

この調査に登場した七つの国を個別に分析すると、国によって大きな差がある。中でも日本人は、コレステロールと心筋梗塞の間に関連がなく、コレステロールと心筋梗塞の関連性が強く認められるのは米国とフィンランドの二ヵ国だけなのである。もしもキーズが、フィンランドではなくて、飽和脂肪酸を豊富に摂取しながら心筋梗塞の発症率の低いフランスやスイスを調査対象に選んでいたなら、結果はまったく違ったものになっていただろう。(70ページ)

国によってバラツキがある調査結果を私たちは今まで信じ込んでいたわけですね。

しかも、飽和脂肪酸の摂取量が多いフランスやスイスを調査の対象から外している時点で、これは怪しいですよ。本来なら、飽和脂肪酸の摂取量が極めて多い人たちと、その摂取量が極めて少ない人たちを対象に調査をした方が優位差が出るはずです。

それなのにフランスやスイスを調査から外しているのは、何らかの意図があったと考えるべきでしょう。

フレンチパラドックスなんて存在しない

最近では、飽和脂肪酸の摂取量が多いフランス人が脳卒中や心筋梗塞にならないのはポリフェノールを多く取っていることが理由だと言われています。これをフレンチパラドックスと言うそうです。

フレンチパラドックスについては、栄養学博士の川島由起子先生監修の「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」で解説されています。

獣肉類を好む欧米の人たちに動脈硬化が多いかといえば、必ずしもそうとはいいきれません。
フランス人を例にとりましょう。彼らはバターも大好きで、確かに総脂質摂取量は多いのですが、総コレステロール値は欧米で最も低く、虚血性心疾患の発症率も決して高くありません。これは、調理で使うオリーブ油に含まれる一価不飽和脂肪酸のオレイン酸や、ワインに含まれるフェノール化合物の働きによるものと考えられています。(201ページ)

フランス人の食生活は、現代の栄養常識や医学常識からすると不健康極まりないものなのに不思議と動脈硬化になる人が少ないのです。その理由は、ポリフェノールが多く含まれるワインをよく飲むからだとされています。

しかし、先ほど紹介した浜崎先生の著書では、飽和脂肪酸を多く摂取した方が脳卒中を起こしにくいという日本における大規模疫学調査の結果が紹介されています。

一九八八年から一九九0年にかけて、四0~七九歳の男女五万八四五三人から食品の摂取頻度に関するアンケート調査をとり、十四年にわたって追跡したところ、飽和脂肪酸の摂取と脳卒中全体に「負の相関」が見られた。飽和脂肪酸をたくさん摂っているほうが脳卒中(脳梗塞、脳内出血、および、くも膜下出血)を起こしにくい。つまり、安全なのである。
心血管疾患に関しても、飽和脂肪酸を摂取すると心筋梗塞が増えるというデータは得られず、統計的優位差は見られないものの、飽和脂肪酸は摂っているほうがむしろ、心筋梗塞の危険率が少なくなっていた。(85ページ)

したがって、飽和脂肪酸を多く摂ると、血管がボロボロになるということはないのです。だから、フランス人が飽和脂肪酸をたくさん摂取していても動脈硬化を発症する割合が少ないのは、ポリフェノールを多く摂取しているからだとは言えません。

 

キーズ先生が飽和脂肪酸は体に悪いと発表した内容に矛盾が生じていたら、その調査に何らかの不備があったのではないかと考えそうなものです。でも、ポリフェノールが体に良いと言い出したのは、誰もキーズ先生の調査結果を疑おうとしなかったのでしょうね。

もしかしたら、キーズ先生の調査結果に矛盾があることを指摘されると困る人たちが、ポリフェノールを持ち出してフレンチパラドックスと言っているのかもしれません。

とりあえず、肉をたくさん食べても、ワインを飲む必要はないということですね。

参考文献

炭水化物を食べれば楽に20kgは太る

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つい最近、炭水化物を食べれば10kg太るという記事を書いたばかりですが、いやいや、炭水化物を食べれば楽に20kgは太るということがわかりました。

前回書いた記事は、モデルのIVANさんがホームレスになって炭水化物ばかりを食べていたら10kg太ったとテレビ番組でおっしゃっていたのを紹介したのですが、同じ番組で、辺見マリさんが炭水化物ばかりを食べていたら20kg太ったと語っていました。

恐るべし、炭水化物。

白米とナポリタン大盛りが太った原因

そのテレビ番組は、芸能人の方の失敗談を語るというもので、辺見マリさんは1988年から2001年までの13年間、詐欺師に洗脳されて5億円をだまし取られたことを告白していました。

洗脳された辺見マリさんは、詐欺師の言うことを信じて、どんなことでも従っていました。ある時から、その詐欺師は辺見さんに白米とナポリタンの大盛りばかりを食べさせるようになります。

それを食べ続けていた辺見さんは、あっという間に20kgの体重増加。間食で甘いものも食べさせられていたので、それも太った原因のひとつでしょう。

ナポリタン大盛りがどれくらいだったのかわかりませんが、500グラムだとしましょう。それに含まれる炭水化物(糖質)が半分くらいだとすると250グラムです。白米を200グラムと想定すると、糖質は70グラムほど含まれている計算になります。

したがって、辺見さんが1食で摂取した糖質量は320グラムですね。糖質1グラムが4kcalなので、辺見さんの1食の摂取カロリーは1,280kcalとなります。

摂取カロリーは少々多めですが、短期間に20kgも太るほどのカロリーではないですね。

太る原因はカロリーではなく糖質量

この程度の摂取カロリーで20kgも太るというのは、炭水化物が人を効率的に太らせる食べ物だということがよくわかります。3食全て白米とナポリタン大盛りなら、4,000kcalほどの摂取カロリーになるので太るのは理解できます。

でも、3食全て白米とナポリタン大盛りとは言ってなかったと思います。なので、こんなに摂取カロリーは多くなかったでしょう。

 

辺見さんがナポリタン大盛りを食べていたのは、90年代初頭です。

この頃は、糖質制限という言葉はなく、カロリー制限こそがダイエットの基本と誰もが思っていました。糖質制限を推進されている京都高雄病院の江部康二先生だって、糖質制限食を本格的に世間に広め始めたのが21世紀になってからです。

辺見さんがナポリタン大盛り生活をしている頃、江部先生は糖質制限をご存知なかったようですから、辺見さんを洗脳した詐欺師は、糖質制限という言葉がない時代にすでに炭水化物を食べると太ることを知っていたんですね。

この詐欺師は、情報の真偽を判断する能力が、とても優れていたのでしょう。そもそも、人を騙すわけですから、情報が正しいかどうかを見極める能力が養われていなければ、いっぱしの詐欺師になれないのかもしれません。

5億円をだまし取った詐欺師の分析能力は、当時の医学をしのいでいたと言えます。

誰だって洗脳されている

最終的に辺見さんは、詐欺師の洗脳が解けて社会復帰できました。

洗脳されていた時は、芸能界を引退して社会との接点が少なく、詐欺師の言うことを疑おうとしなかったそうです。でも、ある時、芸能界に復帰して、他の人と交わるようになり、詐欺師の言っていることがおかしいと気付き始めます。そして、詐欺師の洗脳から解放されたということです。

番組を見ていると、騙される方がどうかしてると思ってしまいます。

でも、ほとんどの現代人が何らかのマインドコントロールを受けてると思うんですよね。カロリー制限でダイエットできると信じているのだって、一種の刷り込みです。肥満で悩んでいる方がカロリー制限をしても、なかなか効果が出てこないのは、カロリー制限がそもそも間違っていると疑うべきなのですが、なぜか、結果が出ない自分の体がおかしいと思い込んでいます。

 

現代の日本は、いろいろなところから様々な情報が発信され、知らず知らずのうちにその情報が頭に入ってきます。この時点で、すでにマインドコントロールされやすい環境にあるということを知っておいた方が良いでしょう。

そして、すでに自分も何らかのマインドコントロールを受けていると思っていた方が、おかしな情報に踊らされずに済むのではないでしょうか?

参考文献


筋肉のグリコーゲンは血糖値の上昇には使われない

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グルコース(ブドウ糖)は、グリコーゲンという形で肝臓と筋肉に蓄えられます。

肝臓のグリコーゲン貯蔵量は100グラム未満、筋肉のグリコーゲン貯蔵量は筋肉量が多い人で300グラム程度です。肝臓のグリコーゲンは血液中のグルコース(血糖)が減少した時に使われます。

そして、筋肉のグリコーゲンは、筋トレや全力疾走のような無酸素運動をするとエネルギーとして使われます。しかし、筋肉のグリコーゲンは血糖を上昇させるために使うことはできません。

筋肉はグルコース-6-ホスファターゼを持っていない

グリコーゲンは、グルコースがたくさん結合した多糖類です。

グリコーゲンをそのまま血中に放り込むことはできないので、血液の中のグルコースの量を増やすためには、グリコーゲンをバラバラにしてグルコースにほぐす必要があります。

グリコーゲンは、様々な酵素を使ってグルコース1-リン酸、グルコース6-リン酸を経て、グルコースまで分解されます。

肝臓には、グリコーゲンをグルコースに分解するのに必要な酵素が揃っていますが、筋肉にはグルコース6-リン酸からグルコースに分解するグルコース-6-ホスファターゼという酵素がありません。なので、筋肉に貯蔵したグリコーゲンはグルコース6-リン酸までしか分解できず、この状態では血中にグルコースを放り込むことができません。そのため、筋肉に貯蔵したグリコーゲンは、筋肉のエネルギーとして使われます。

血糖の管理はすい臓が行っている?

低血糖は、死の危険があるので、人間に限らず動物は低血糖を防止するために血糖値を上げるホルモンを複数用意して保険をかけていると言われています。グルカゴン、アドレナリン、成長ホルモンといったホルモンが血糖値の上昇に関わっています。

一方、血糖値を低下させるホルモンはインスリンしかありません。血糖値を下げるホルモンがインスリンだけというのは何とも心もとないです。

血糖値を下げるホルモンがインスリンだけというのは、人類の長い歴史で糖質を摂取するようになったのが、1万年ほど前とつい最近のことだから、体が高血糖に対処できるほど進化していないと言われています。

でも、すい臓の働きをみると、血糖値を下げるホルモンがインスリンだけしかないことに何となく納得できます。

すい臓には、ランゲルハンス島という分泌細胞が集まった部分が散在しています。そして、ランゲルハンス島には、A細胞が15%、B細胞が80%、D細胞が5%の割合で分泌細胞が存在しています。それぞれの分泌細胞の働きは以下のとおりです。

  • A細胞=グルカゴンを分泌。肝臓に働きグリコーゲンからグルコースへの分解を促進し血糖値を上げる
  • B細胞=インスリンを分泌。筋肉細胞へのグルコースの取り込みを促進し血糖値を下げる
  • D細胞=ソマトスタチンを分泌。A細胞とB細胞に作用してグルカゴンとインスリンの産生と分泌を抑制

この3つの分泌細胞の働きをみると、主にすい臓が血糖の管理を行っているように思えませんか?

インスリンを分泌するB細胞が圧倒的に多いので偏っているようにも思えますが、とりあえず、すい臓で、血糖の上昇と下降の指示が出され、血糖を上げすぎたり下げすぎたりしないようにD細胞を監視役に据えていますから、血糖の管理体制はできていますね。

アドレナリンや成長ホルモンは筋肉へのグリコーゲン取り込みが主たる役割か?

血糖値を上昇させるホルモンには、すい臓のA細胞から分泌されるグルカゴンの他に副腎から分泌されるアドレナリン、脳下垂体前葉から分泌される成長モルモンも関わっていると先ほど述べました。

  • アドレナリン=グルカゴンが肝臓に働きグリコーゲンの分解を促進するのに対して、アドレナリンは肝臓と筋肉に働きグリコーゲンの分解を促進
  • 成長ホルモン=中性脂肪をグリセロールと脂肪酸に分解。グリセロールは肝臓や腎臓で行われる糖新生によって、ジヒドロキシアセトンリン酸、フルクトース1,6-二リン酸、グルコース6-リン酸を経てグルコースになる

アドレナリンも成長ホルモンも、グルコースの生成に関与しています。そして、グルコースは血中に放り込まれるので血糖値が上昇します。ただし、筋肉のグリコーゲンはグルコース6-リン酸までしか分解できないので血中に放り込むことはできません。

 

ここからは私の勝手な妄想です。

アドレナリンも成長ホルモンも血糖値を上げる働きをしていますが、本来の目的は筋肉へのグリコーゲンの貯蔵なのかもしれません。

アドレナリンも成長ホルモンも運動をすると分泌されます。運動で筋肉を激しく動かせば、筋肉に貯蔵されているグリコーゲンがエネルギーとして消費されます。だから、消費されたグリコーゲンと同量のグリコーゲンを再び筋肉に貯蔵する必要があります。

そこで、アドレナリンと成長ホルモンを分泌してグルコースを生成し、血流に乗せて筋肉へと運び、グリコーゲンを補充しているのではないでしょうか?

インスリンなしでもGLUT4を細胞膜に移動させれる

各組織にグルコースを取り込むためには、グルコーストランスポーターというタンパク質が関わっています。栄養学博士の川島由起子先生監修の「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」によると、その種類は以下の5種類です。

  1. GLUT1=ほとんどの組織にあり赤血球、脳、腎臓に発現。肝臓にはない
  2. GLUT2=肝臓、すい臓のB細胞、腎尿細管、小腸上皮細胞に存在
  3. GLUT3=神経細胞や胎盤に存在
  4. GLUT4=筋肉と脂肪組織に存在。インスリンによって発現
  5. GLUT5=小腸上皮細胞に存在。フルクトースの輸送体

筋肉にグリコーゲンを貯蔵するために働くのはGLUT4です。

GLUT4は、筋肉の細胞内にあります。インスリンが筋肉細胞のインスリン受容体に結合すると、GLUT4が細胞膜へと移動し、細胞の外と内を通すトンネルができて、ここを通ってグルコースが細胞内に入ります。

したがって、インスリンが分泌されないことには、GLUT4が細胞膜に移動しないので、筋肉細胞がグルコースを取り込めません。

 

でも、インスリンの分泌以外にも、GLUT4を細胞膜に移動させる手段があります。

それは、運動です。

運動による刺激でもGLUT4は活性化されて細胞膜まで移動し、グルコースが通過するトンネルを作ります。糖尿病の方に食後の運動をすすめるのは、GLUT4を活性化させて血糖を筋肉に取り込ませる意味があったんですね。

 

ここから再び妄想です。

GLUT4はインスリンと運動によって細胞膜まで移動します。

しかし、インスリンによる刺激は血中のグルコース濃度が高い場合にそれを下げるのが目的であり、運動による刺激は消費した筋肉内のグリコーゲンを再貯蔵することが目的なのではないでしょうか?両者は同じ働きをしていますが、実は異なる目的を持って血糖を筋肉に取り込んでいるように思います。

このように妄想すると、血糖の管理はすい臓に一元化されていると考えても辻褄が合います。

血糖の上昇はグルカゴン、血糖の低下はインスリン、両者の産生と分泌を抑制するのがソマトスタチン。

うまい具合に3者の役割が分担されているのに気づきます。

そして、インスリン以外のアドレナリンや成長モルモンといった血糖値を上げるホルモンは運動時によく分泌されるのですから、運動によって消費された筋肉のグリコーゲン貯蔵が主たる目的のように思います。

ただの妄想ですが。

参考文献

ケトン体はアセチルCoAから作られる

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脳のエネルギー源はブドウ糖だけではありません。ケトン体も脳のエネルギー源として利用できます。

体内のグルコース(ブドウ糖)が減少しても、ケトン体があれば脳が機能停止することはありません。

では、ケトン体は体内でどのようにして作られるのでしょうか?

三大栄養素からエネルギーが作られる過程

ケトン体は肝臓で作られますが、一般的にその材料となるのは脂肪酸だと説明されています。

中性脂肪が分解されると、グリセロールと脂肪酸になります。脂肪酸は、細胞内にあるエネルギー工場のミトコンドリアで、β-酸化によりアセチルCoA(コーエー)に分解されます。

このアセチルCoAからケトン体が作られます。

 

下の図は、糖質、タンパク質、脂質からアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギーが作り出される過程を簡略化したものです。ちなみに参考にしたのは、川島由起子先生監修の「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」の62ページです。ほとんど同じ図なんですけどね。

糖質、タンパク質、脂質からエネルギー(ATP)産生までの経路

上の図の右側にあるのが脂質からエネルギーを生み出す過程です。

脂質が分解されてできた脂肪酸は、ミトコンドリアでβ-酸化により分解されてアセチルCoAになった後、オキサロ酢酸とくっついてクエン酸になります。そして、クエン酸がクエン酸回路(TCAサイクル)に入り、様々な物質に姿を変えながら、最終的にオキサロ酢酸になります。再び、アセチルCoAは、クエン酸回路を回して生じたオキサロ酢酸とくっついてクエン酸となります。

つまり、ミトコンドリア内では、アセチルCoAとオキサロ酢酸から作られたクエン酸が、何度も何度もクエン酸回路を回しているのです。

クエン酸回路が回ると、NADHやFADH2という物質が生成され、これが電子伝達系に運ばれてATPを産生します。

 

糖質は、グルコースに分解されて解糖系を通りピルビン酸になった後にアセチルCoAとなってクエン酸回路に入ります。

タンパク質は、アミノ酸に分解された後、糖新生によってグルコースになり、ピルビン酸、アセチルCoAを経てクエン酸回路に入ります。

すなわち、糖質もタンパク質も脂質も、ミトコンドリアでATPを作り出すためには、必ずアセチルCoAになるのです。この点から、三大栄養素はミトコンドリアでのエネルギー産生に関しては同質と言えます。

ここで、重要なのがオキサロ酢酸です。糖質もタンパク質も脂質も、ミトコンドリアでクエン酸回路を回しATPを作り出すためには、必ずオキサロ酢酸がなければなりません。

肝臓ではオキサロ酢酸は糖新生に必要

肝臓に蓄えたグリコーゲン(糖質)が無くなると、糖新生によってグルコースを作り出します。糖新生は肝臓で行われるのですが、この時、オキサロ酢酸が糖新生の材料として使われます。

そうすると、肝臓のミトコンドリアにあるオキサロ酢酸が糖新生に使われるので、アセチルCoAはクエン酸回路に入れません。この時、肝臓内のアセチルCoAはケトン体に姿を変えて、血流に乗って各組織に運ばれます。

そして、各組織では、ケトン体を再びアセチルCoAに戻した後、クエン酸回路を回してATPを作り出します。

 

さて、冒頭で、ケトン体は脂肪酸から作られると述べました。生物学の本を読んでも、インターネットで調べても、ケトン体は脂肪酸から作られると記述されています。

しかし、ケトン体は、肝臓でアセチルCoAがオキサロ酢酸不足でクエン酸回路に入れない時にアセチルCoAが姿を変えたものです。そして、アセチルCoAは、糖質、タンパク質、脂質のいずれからでも、ミトコンドリアで作られます。

そうすると、ケトン体は必ずしも脂肪酸からしか作られないということではないと思うんですよね。

ネットでさらに調べてみると、銀座東京クリニックの以下のページで、「ケトン体は一部のアミノ酸からも産生されます」という記述を発見しました。

タンパク質が分解されてできるアミノ酸には、ケト原性アミノ酸と糖原性アミノ酸があり、ケトン体合成に使われるのはケト原性アミノ酸だということです。

また、糖原性アミノ酸は「TCAサイクルに入って糖産生に利用されるもの」だそうです。そうすると、糖原性アミノ酸から作られたグルコース(糖質)からは、ケトン体を作り出せないということなのかもしれません。そうすると食物から摂取した糖質を分解してできるグルコースからもケトン体を作り出せないということなのでしょうか?

 

考えても考えてもよくわかりません。

最終的にクエン酸回路を回す時に糖質もタンパク質も脂質もアセチルCoAに変わるのなら、三大栄養素は全て肝臓でケトン体になりそうなものなのですが。

それ以前に糖質を大量摂取している状況では、肝臓でオキサロ酢酸が糖新生に回って不足することはなさそうに思います。なので、グルコースからできたアセチルCoAが、ケトン体になることはないのかもしれません。

 

なお、神経内科医のたがしゅう先生が、ブログでケトン体について興味深いことを解説されていますので、ご覧になってください。

たがしゅう先生が、この記事に気づかれましたら、糖質由来のアセチルCoAからケトン体を作ることができるのかどうかを記事で解説していただけるとありがたいです。

参考文献

解糖系とミトコンドリアのどちらを重視するかで主要エネルギー源は変わる?

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人間の主要なエネルギー源については、グルコース(ブドウ糖)なのか脂質なのかといった議論があります。

昔からグルコースが主要なエネルギー源と言われていますが、人間は、グルコースの他にも、タンパク質と脂質もエネルギー源として利用できます。なので、グルコースが主要エネルギー源だとする考え方においては、タンパク質と脂質はおまけといった位置づけになるのでしょう。

一方、脂質を主要なエネルギー源と考えるのであれば、グルコースとタンパク質はおまけとなるはずです。

解糖系とミトコンドリアの比較

糖質(グルコース)、タンパク質、脂質の三大栄養素のうち、どれが主要なエネルギー源かを決める前にエネルギーを生み出すエンジンには、解糖系とミトコンドリアがあることを知っておかなければなりません。

そして、解糖系とミトコンドリアのどちらがメインエンジンかを決めなければ、三大栄養素のどれが主要なエネルギー源かを決定できないはずです。ということで、まずは解糖系とミトコンドリアの違いを知る必要があります。

なお、以下の説明では、タンパク質は主要なエネルギー源の候補からは外します。タンパク質が分解されたアミノ酸は、糖新生によってグルコースになりますから、タンパク質を主要なエネルギー源と考えることは、グルコースを主要なエネルギー源と考えることと同じになるからです。

 

解糖系は、グルコースを使ってアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギーを作り出します。グルコース1分子から解糖系で生み出されるATPは2分子です。

一方のミトコンドリアは、解糖系でのグルコースの代謝産物であるピルビン酸や脂質が分解された脂肪酸がアセチルCoA(コーエー)になり、クエン酸回路で代謝されてATPが産生されます。

 

解糖系は、酸素が供給されなくてもATPを産生できるので即効性があります。一方のミトコンドリアは、酸素がなければATPを作り出せないので、解糖系と比較するとエネルギーを作り出すのが遅いです。

しかし、ミトコンドリアは解糖系と比較すると大量のATPを作り出せます。解糖系で代謝されたグルコースは、ピルビン酸、アセチルCoAを経てクエン酸回路に入って30分子のATPを生み出します。また、脂質が分解された脂肪酸から変換されたアセチルCoAは、100分子以上のATPを生み出します。特に脂肪酸のうちパルミチン酸は129分子ものATPを生み出します。

 

上の説明を簡単な図で示すと以下のようになります。

解糖系とミトコンドリア

即効性とエネルギー量のどちらを重視すべきか

解糖系とミトコンドリアのどちらをメインエンジンと考えるかは、即効性とエネルギー量のどちらを重視するかにかかっています。これを議論せずにグルコースと脂肪酸のどちらが主要なエネルギー源かを決定することはできないでしょう。

ATP産生の速度が早いか遅いか、ATP産生量が多いか少ないかを表にまとめると以下のようになります。

エンジンとエネルギーの組み合わせ

理想のエンジンとエネルギー源は、ATP産生速度が速く、ATP産生量が多いエンジンとエネルギー源の組み合わせですが、上の表を見ればわかるようにそのような組み合わせはありません。

また、速度が遅く量が少ない「ミトコンドリア+グルコース」の組み合わせは、普通に考えれば主たるエンジンとエネルギー源の組み合わせにはなりません。

そうすると、即効性はあるが量が少ない「解糖系+グルコース」の組み合わせか、即効性はないが量が多い「ミトコンドリア+脂肪酸」の組み合わせのどちらかが、「メインエンジン+主要なエネルギー源」となるはずです。

ライターとガスコンロのどちらが好きかで決まる

「解糖系+グルコース」の組み合わせは、ライターに例えることができるでしょう。ライターは、ポケットから取り出して親指でボタンを押すか、円い金具をこするかすると火がつきます。すぐに火を使いたいときはライターが便利ですが、火力が弱いといった難点がありますね。

「ミトコンドリア+脂肪酸」の組み合わせは、ガスコンロに例えるとわかりやすいです。ガスコンロを使うためには、ガスボンベをコンロに設置しなければなりません。ライターに比べると用意する時間がかかります。また、つまみを回して数秒間カチカチと火花が散った後、やっと火がつきます。しかし、いったん火がつくと、その火力はライターをはるかにしのぎます。

 

即効性を重視するのなら、米やパンなど炭水化物(糖質)が多く含まれた食べ物を食べれば良いでしょう。逆にエネルギー量重視なら、脂質が多く含まれた肉などの動物性食品を積極的に食べれば良いでしょう。

ちなみに産婦人科医の宗田哲男先生の著書「ケトン体が人類を救う」では、糖質エンジンは高率が悪くメインエンジンにはならないといった旨の記述があります。そして、脂質を使ったケトン体エンジンこそが、メインエンジンだと述べています。

ほかの生物では、ケトン体の働きはもっとはっきりしています。たとえば、冬のシベリアに向かって飛んでいく渡り鳥は、どんなエネルギーで飛んでいるのでしょうか。
これは蓄えた脂肪を燃やして飛んでいるのです。糖質エンジンは、じつは効率が悪くて、長く飛べるようなエンジンではありません。動物の身体に蓄えられるエネルギー源は、じつは脂肪である場合が多く、糖質は一時しのぎのエネルギーであって、補給を頻繁にしないとすぐに枯渇してしまいます。(120ページ)

鍋料理をする時、即効性があるからとライターで温める人はいませんよね。準備に少しくらい時間がかかってもガスコンロを使うはずです。

それと同じで、人間やそのほかの動物も、解糖系ではなくミトコンドリアをメインエンジンにしているのではないでしょうか。

そう考えると、脂肪酸よりもATP産生量が少ない糖質(グルコース)が主要なエネルギー源になるとは考えにくいですね。

参考文献

筋肉のグリコーゲンは糖質を摂取しなくても貯蔵できる

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最近、2日続けて全力疾走しました。

普段、理由もなく走ることなんてないのですが、久しぶりにダッシュしてみました。準備運動一切なしでの全力疾走だったので、普通に歩いている状態からゆっくりと走り出し、徐々に速度を上げていってトップスピードに持っていくという走り方です。

距離にすると100メートルほどでしょうか。その半分くらいの距離は全力疾走です。それを1日に3回か4回、2日合計で7回ほど全力疾走しました。おかげで太股が筋肉痛になってしまいました。

糖質を摂取しなくても瞬発力を発揮できる

なぜ、いきなりダッシュをしようと思ったかというと、普段の食事で極力糖質を摂取しないようにする糖質制限を行っていても瞬発力を発揮できるのかどうかを試したかったからです。

ちなみに私は、糖質制限歴2年6ヶ月です。

筋肉には、グリコーゲンが貯蔵されています。グリコーゲンからは、無酸素下でアデノシン三リン酸(ATP)というエネルギーを作り出せます。だから、瞬間的に体を動かすためには、酸素が供給されなくてもエネルギーとして利用できるグリコーゲンが、筋肉に蓄えられていなければならないとされています。

グリコーゲンの材料は、糖質です。糖質を摂取すると血糖値が上がります。血糖値を下げるためにすい臓からインスリンが追加分泌されて、糖質(血糖)が血管の外に出されて筋肉にグリコーゲンとして蓄えられます。たくさんの糖質を摂取した場合には、グリコーゲンを筋肉に貯蔵できなくなるので、余った糖質は中性脂肪として体に蓄えられます。

なお、筋肉に貯蔵できるグリコーゲンは、300グラム程度と言われています。

瞬発力を発揮するにはグリコーゲンが必要。だから、普段から糖質をしっかりと摂取してグリコーゲンを補充しなければならないと主張する人がいます。しかし、私は、糖質制限をしていても、全力疾走できたのですから、そんなことはありません。

高速で、プッシュアップ(腕立て伏せ)もできますから、食事で糖質を摂取しなくても、瞬発力の発揮に何も影響はありません。

糖質摂取とグリコーゲンの貯蔵とは無関係

私だけの経験なんて、信用できないという方もいるでしょう。それは、ごもっとものことです。でも、以下の記事を読めば、糖質摂取と筋肉のグリコーゲンの貯蔵は、無関係だということが分かります。

この記事は、以前に医師の夏井睦先生が運営するウェブサイト「新しい創傷治療」で、紹介されていたものです。

 

上記の記事では、長期間糖質制限をしているアスリートと炭水化物(糖質)を一般人並みに摂取しているアスリートの脂肪燃焼効果を検証した結果が掲載されています。糖質制限をしているアスリートと糖質摂取しているアスリートの1日の三大栄養素に占める糖質摂取割合は以下のとおりです。

  • 低糖質アスリート:10%
  • 高糖質アスリート:59%

糖質摂取量が少ないアスリートの方が、運動後のグリコーゲンの貯蔵に時間がかかるのではないかと思うでしょうが、実際には、両者とも疲労からの回復時にほぼ同じ量のグリコーゲンを合成したということです。長時間走っている間のグリコーゲンの分解量もほぼ同じです。

この実験結果から、糖質摂取量と筋肉のグリコーゲンの貯蔵量や貯蔵時間とは無関係だと言えるでしょう。

それでも、糖質を摂取しなければグリコーゲンを貯蔵できないと疑っている方は、実際に糖質制限をして、毎日、全力疾走してください。そうすれば、簡単にわかることです。

糖質制限をしたアスリートの脂肪燃焼効果は2倍

さらに興味深かったのが、糖質制限をしたアスリートの脂肪燃焼効果が、高糖質食のアスリートよりも、脂肪燃焼効果が2倍も高かったということです。両者の最大脂肪燃焼率の平均値は以下のとおりです。

  • 低糖質アスリート:1.5g/分
  • 高糖質アスリート:0.67g/分

消費カロリーに換算すると、低糖質アスリートは13.5kcal/分、高糖質アスリートは6.03g/分です。圧倒的に糖質制限をしているアスリートの方が脂肪のエネルギー利用量が多いですね。

糖質制限をすると、体が疲れにくくなります。その理由は、高糖質食を毎日食べている人よりも、脂肪のエネルギー利用が上手だということでしょう。当然、これだけ素早く脂肪をエネルギー利用できるのですから、糖質制限をすれば太りにくい体質になります。

 

この結果を見れば、糖質制限をして痩せるのは、体内のグリコーゲンが減るからだという主張がおかしいことが分かるでしょう。

体内のグリコーゲンは、筋肉に300グラム、肝臓に100グラム以下しか貯蔵されていません。グリコーゲンの貯蔵には、水が3倍とか4倍とか必要とされますが、これらを含めても、グリコーゲンが枯渇した場合に減少する体重は、せいぜい2kg程度です。

しかし、糖質制限をした人は、それ以上の体重減少を経験しています。これは、高糖質食を食べていた時よりも、中性脂肪を分解してATPを作り出す能力が高まったからではないでしょうか?

瞬発力を発揮するのに必要なのはクレアチンリン酸

また、瞬発力を発揮するのにグリコーゲンが必要だと言われていますが、クレアチンリン酸の方が、素早くATPを産生できます。これについては、以下の過去記事で紹介しています。

糖質を摂らなければ筋肉に力が入らないとか、非常時に瞬間的に力を出すためにはグリコーゲンが必要だと言われますが、どちらも違うでしょう。糖質を摂らなくてもグリコーゲンの貯蔵に問題はありません。非常時に瞬発力を発揮するために使われるエネルギー源は、クレアチンリン酸です。

 

「糖質制限をすると痩せる、糖質制限をすると疲れにくくなる」

実はこれも正しくありません。

 

「糖質を摂取すると太りやすくなる、糖質を摂取すると疲れやすくなる」

これが正解ですね。

日本は江戸時代から国民全員分の米を収穫していた

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よく昔の日本は貧しくて、食べ物に困っていたと言われています。特に江戸時代は、武士のような特権階級や富豪だけが米を食べていて、貧しい農民は、ヒエやアワしか食べてなかったというのが常識となっていますね。

でも、これは普通に考えてあり得ないことです。江戸時代は、農民たちも毎日しっかりと米を食べていたと考えられます。

米1石は150kg

江戸時代の日本人が、毎日、米をしっかりと食べることができたということを知るためには、当時の米の重量を測る単位である石(こく)がどのくらいの量なのかを知っておかなければなりません。

1石は150kgです。そして、1合は150gです。したがって、1石は1合の1,000倍ですから1石は1,000合と計算できます。

ちなみに時代劇を見ていると、加賀100万石といった表現をされていますが、100万石は1億5千万kgの米の量になります。

なお、1石は人間1人が1年間に消費する米の量を意味します。1石は1,000合ですから、1日当たり約2.74合の米があれば江戸時代の日本人は生きていけたわけですね。現代人で3食白米を食べる場合でも、2.74合は多いように感じますが、この量を江戸時代の日本人は食べていました。

武士は人口の5%しかいなかった

江戸時代、農民が作った米は、武士に年貢として納めなければなりませんでした。

だから、農民たちは米を食べれなかったと思ってしまいますが、江戸時代には全国民に米が行き渡る量の生産が行われていたのですから、それはあり得ません。

当時の武士の人口は全人口の5%程でした。まさか毎日武士が20人分の米を食べていたとは考えられません。米の転売をしたでしょうが、国内で収穫された米は国内でしか流通しません。なぜなら、江戸時代の日本は鎖国をしていたからです。海外に米を売りさばくことは不可能です。

これについては、作家の井沢元彦さんの「逆説の日本史1巻」でも指摘されています。

とてつもなく大量の米が余ったはずである。まさか、ドブに捨てたわけではあるまい。備蓄したのでもない。江戸時代に大量の埋蔵金ならぬ埋蔵米があったなどどいう話は聞いたことがない。
結局、それは人口の九十パーセントをしめる農民の口に、最終的には入ったに違いない。(75~76ページ)

おそらく、これが事実でしょう。

江戸時代の石高と人口はほぼ一致する

江戸時代の日本は鎖国をしていたのですから、自国民の食糧は国内ですべて賄う必要がありました。つまり、食糧自給率が100%でなければならなかったのです。

先ほども述べましたが、1石は人間の1年間の米の消費量のことです。だから、江戸時代の全国の米の収穫量(石高)と総人口は一致してなければなりません。そして、江戸時代の米の収穫量と総人口はほぼ一致していることが分かっています。

以下の表は、Wikipediaの「石高」と「江戸時代の日本の人口統計」を基に作成しました。

江戸時代の石高と人口
年代 万石 万人 1人分/年(石) 1人分/日(合)
1872年 3,2373 3,310 0.978 2.68
1830年頃 3,056 2,706 1.129 3.09
1700年頃 2,591 2,607 0.994 2.72

この表を見るとわかるように石高と人口はほぼ一致しています。

1872年は明治5年ですが、おそらく幕末でも収穫量と人口に大差はなかったでしょう。1830年ころになると1人当たり年間1.1石の米が収穫されていたのですから、農民が有り余っている米を食べずにヒエやアワを毎日食べていたとは考えられません。

江戸時代初期の1600年頃でも石高は約2,000万石ありましたし、諸説ありますが、当時の人口も2,000万人程度と推測されています。

食べ物に余裕があったのに低身長だった

江戸時代の日本人は、現代の日本人と比較すると低身長でした。

食べるものがあったにも関わらずです。これは、普通に考えれば米ばかり食べていても、体作りにはあまり役立たないということではないでしょうか?

それどころか、米ばかりを食べていたことが原因で、脚気になっていたのですから、米食は不健康食とも考えられます。

江戸時代の人が脚気になった原因はビタミンB1不足だと指摘されます。そして、B1が不足したのは、玄米から精製された白米を食べるようになったからだとも言われています。米の胚芽にB1が含まれていたのにそれを食べなくなったからだと。

この説は正しそうですが、それ以上に米をたくさん食べること自体が、ビタミンB1不足をもたらすことも指摘しておくべきです。

米に多く含まれる炭水化物(糖質)を体内でエネルギー利用する場合、ビタミンB1が必要になります。エネルギー源の多くを糖質から得るということは、それだけB1を消費するということですから、米の食べ過ぎそのものが脚気のリスクを高めると言えるでしょう。

ちなみに脂質はビタミンB2、タンパク質(アミノ酸)はビタミンB6が、エネルギー利用する場合に必要となります。ビタミンB1ばかりを消費する炭水化物中心の食事は、バランスが悪いです。エネルギー効率を高めるには、脂質とビタミンB2の摂取も必要ですし、タンパク質とビタミンB6の摂取も大切でしょう。

 

江戸時代の農民が米を食べていなかったという話は、誰かの単なる思い込みです。それを信じていると、現代日本人は米をたくさん食べて健康になったんだとか、世界一の長寿国になったんだと勘違いしてしまいます。

現代日本人の1人当たりの米の消費量は、農林水産省の発表によると2013年度で56.9kgということです。

米の消費量を江戸時代の半分以下に減らしたら、平均寿命が40歳程度から80歳以上に延びたのですから、米に偏った食事が寿命を縮めると考えても良さそうです。

もちろん、平均寿命の延びには衛生環境や医療の発達など、その他の要素もありますが。

参考文献

三大栄養素は人体に必要となる主要な栄養素という意味で名付けられたのではない

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糖質、タンパク質、脂質は、現代栄養学で三大栄養素と呼ばれています。

三大栄養素と言うからには、この3つの栄養素が人体にとって最も重要な栄養素だと、なんらかの研究の結果でわかったのだろうと思っていたのですが、そうではないようです。実は、もっと単純な理由から、糖質、タンパク質、脂質は三大栄養素と呼ばれるようになったのです。

三大栄養素を明らかにしたのはドイツのリービッヒ

糖質、タンパク質、脂質が三大栄養素とされたのは、19世紀半ばです。

そして、三大栄養素を明らかにしたのは、ドイツのリービッヒでした。これについては、帝京大学医学部の名誉教授である杉晴夫先生の著書「栄養学を拓いた巨人たち」で紹介されていますので、該当箇所を引用します。

リービッヒはやがて教授に昇進し、類い稀な政治力を発揮してギーセン大学に大研究室を建設した。そして従来の科学の授業が理論に偏っていたのを改め、もっぱら科学分析法の応用や改良をおこなう教育計画を創案して、学生をトレーニングした。(中略)これにより、生化学の分析及び合成技術は大いに進歩し、その結果、食物の主成分はタンパク質、糖質、脂質であることが明らかにされたのである。(58ページ)

この文章は、私にとって衝撃的でした。

三大栄養素が、タンパク質、糖質、脂質であることが明らかにされたのはリービッヒの研究からです。でも、この文章を読むと、彼は人体を構成する成分から三大栄養素を導き出したのではないですよね。

「食物の主成分はタンパク質、糖質、脂質であることが明らかにされた」という部分を読めば分かるように、リービッヒは、当時のドイツで食べられていた食物の中にタンパク質、糖質、脂質がたくさん含まれていることを明らかにして、三大栄養素と名付けたということでしょう。

つまり、三大栄養素は、人間にとって最も重要な3つの栄養素という意味で命名されたのではないということです。

糖新生は19世紀にわかっていた

「栄養学を拓いた巨人たち」では、他にも栄養学について興味深いことがいくつも紹介されています。

人間は、糖質を摂取しなくても体内でブドウ糖(グルコース)を作り出せます。それをイヌを使った実験で明らかにしたのが、クロード・ベルナールです。ベルナールはフランス人で、活躍した年代はリービッヒとほぼ同じです。

ベルナールは、体内での糖質代謝を解明した偉人です。彼がいなければ、糖質がどのようにしてアデノシン三リン酸(ATP)というエネルギーを生み出すのかを解明できなかったかもしれません。

ベルナールは、ショ糖からブドウ糖ができることを発見します。そして、ショ糖をイヌの静脈に注射したところ尿として排泄されました。でも、ブドウ糖を注射しても尿中には排泄されず、体内で利用されていることがわかりました。

また彼は、餌を与えず飢餓状態にしたイヌの血液中にブドウ糖が現れるのを見出した。次いで、栄養素を消化管から肝臓へと運ぶ門脈中に、大量のブドウ糖が存在することを発見した。そして肝臓からも、動物の食物の種類にかかわらず、大量のブドウ糖が見つかった。さらには、動物体から分離した肝臓が、ブドウ糖をつくりだすことも発見した。こうして、肝臓が体内における糖質の代謝反応の中心的存在であることの、最初の手がかりが得られたのである。(68ページ)

このイヌの実験からわかることは、イヌは糖質を摂取しなくても自力でブドウ糖を作り出せるということです。そして、この機能は人間にも備わっていて、糖新生と呼ばれています。すわなち、人間は糖質を摂取しなくても問題ないということが、すでに19世紀のベルナールの実験から推測できていたのです。

体内の脂質は糖質摂取で作られる

ダイエットをされている方は、日々の食事の中で脂質をできるだけ控えるようにしてると思います。その理由は、脂質を食べると体に脂肪がついて太るから。おそらく、多くの方が、そう思っているはずです。

でも、これが誤りであることも、19世紀のフランスでデュマとプサンゴーの実験でわかっています。

彼らはまず、脂質を含む雑多な飼料で飼育したブタを解剖して組織を分析した。次いで脂質を含まない植物性飼料で飼育したブタの組織を分析した。しかし、その結果は彼らの期待を完全に裏切るものだった。脂質を含まない植物性飼料で飼育したブタのほうが、組織の脂肪は多かったのである。
この結果は明らかに、脂質は体内で、植物に由来する糖質からつくられることを証明した。(61ページ)

そうです。お腹周りや内臓につく脂肪は、糖質(炭水化物)を摂取することが理由だったのです。この事実が、2世紀も前に確認されていたのに現在でも脂質の摂取が太るという迷信を多くの人々が信じています。

その後、デュマとプサンゴーは、当初の脂質が燃焼してエネルギー源になるという仮説が実験で誤りだったとわかったことに落胆し、栄養学の研究をやめたそうです。

食の洋風化とは高炭水化物食に替えること

現代日本では、食の洋風化が各種の生活習慣病の原因だと言われています。そして、食の洋風化とは、肉中心の食事をすることとされています。

西洋風の食生活は健康に良くないから、日本人はしっかりと米を食べて脂質を減らさないとダメだと医師や栄養士の方々が警告をしていますが、実は、低脂質・高糖質(高炭水化物)食こそが、西洋風の食生活なのです。

冒頭でも登場したドイツのリービッヒの研究員だったフォイトは、ベッテンコーファーとともに栄養学の知識を食生活の改善に生かそうと取り組みます。そして、三大栄養素の摂取バランスを提唱しました。

たとえば体重70kgで中程度の労働に従事する成人男子は、毎日タンパク質105g、脂質56g、糖質500gを摂取すべきで、これにより3000kcalのエネルギーが得られるとした。またデスクワークに従事する者は毎日2400kcalでよいとした。彼らが提唱したこのエネルギー所要量は、多くの国で採用された。(75~76ページ)

フォイトらの提唱した三大栄養素のカロリーと割合を計算してみると以下のようになります。

  • タンパク質=420kcal(14.4%)
  • 脂質=504kcal(17.2%)
  • 糖質=2,000kcal(68.4%)
  • 合計=2,924kcal(100%)

糖質を摂取カロリーの3分の2の割合にした食事は、高度成長期の日本の食生活と同じです。それ以前の日本では摂取カロリーの7割以上を糖質から補給していました。

上のカロリー比を見れば、高糖質食こそが西洋風の食事であり、日本も同じような食事をしていたのです。西洋だろうが東洋だろうが、高糖質食を続けてきたことが肥満の原因でしょう。

 

「栄養学を拓いた巨人たち」を読んで、栄養学に関する興味深い発見がたくさんありました。今まで疑問に思っていたことの多くが、一気に解決しましたね。

筋トレをしている人、トレーナーの方、ダイエットの専門家の方にこそ読んで欲しいです。

もちろん、糖質制限をしている方にも読んで欲しいですし、内容を広く世間に紹介してもらいたいですね。

参考文献

三大栄養素の摂取バランスの変化に体はすぐ適応できない?

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炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質は三大栄養素と呼ばれており、日本人の食事摂取基準2015年版では、これらのカロリー摂取比率を以下のようにすることを推奨しています。

  • 炭水化物:50~65%
  • 脂質:20~30%
  • タンパク質:13~20%

炭水化物に偏っているので非常にバランスが悪いです。この比率に従えば日本人の一般的な食事内容になって問題ないだろうという確率論的な考え方から求められた数値なので、日本人の平均的なカロリー摂取比率も大体このようになっています。

ところで、このカロリー摂取比率を変えるとどうなるのでしょうか?

体内には三大栄養素を補完する反応がある

三大栄養素の中には、脂質に含まれる必須脂肪酸、タンパク質に含まれる必須アミノ酸のように必ず食物から補給しなければならない栄養素があります。

でも、それ以外の糖質、脂質、タンパク質(アミノ酸)は、それぞれが補完し合う関係にあることから、必ずしも三大栄養素を毎回の食事で摂取する必要はありません。帝京大学名誉教授の杉晴夫先生の著書「栄養学を拓いた巨人たち」によると、体内でよく起こる三大栄養素の相互補完的な反応は以下のとおりです。

(1)糖質→脂質・アミノ酸
(2)脂質→アミノ酸
(3)タンパク質→脂質・糖質
(209ページ)

昔の日本人は糖質中心の食生活だったことから反応(1)が体内でよく起こっていたと考えられます。また、海獣を食する習慣があったイヌイットは主にその脂肪で生活していたことから反応(2)が必要だったはずです。

反応(3)は、絶食をした時に身体のタンパク質をエネルギー源として利用する反応です。当然、身体を構成するタンパク質が減っていくので痩せていきます。

食事を米食から肉食に変えたらスタミナが減少した

「栄養学を拓いた巨人たち」では、古代ローマ人や日本の武士は、米や小麦などの穀物を主体とした食事をしていたのに優れたスタミナを持っていたと述べられています。彼らのスタミナが優れていたのは、身体の代謝系が食習慣に適応して反応(1)が盛んになり、動物性タンパク質の不足を糖質で補うことができたからだということです。

また、興味深い事例として明治初期に西洋医学を日本に伝えたベルツの体験談が紹介されています。

彼は滞日中、当時わが国で発明された人力車を引く車夫のスタミナに感心した。彼らは客を乗せて一日数十キロメートルを軽々と走破した。ところが、ベルツが試みに彼らに肉を食べさせてみたところ、たちまちスタミナを消失し、少し走っただけでばててしまった。つまり、彼らは動物性タンパク質を有効にエネルギー代謝に利用する(3)の反応をただちに発動させて肉食に適応することができなかったのである。(211~212ページ)

一読しただけだと、米は肉よりもスタミナがつく食品だと思うでしょう。そして、実際に米を食べるのをやめて肉中心の生活にした方も、体が疲れやすくなったと感じたと思います。

でも、それは米がスタミナ食というのではなく、米や小麦など糖質中心の食生活によって反応(3)が起こりにくい体質になっていたということではないでしょうか?また、同書では、イヌイットとは異なる民族が彼らと生活を共にすると食習慣に適応できないため反応(2)がよく起こらず、重篤な症状に陥ることがあるとも述べられています。

なんてことはなく、摂取カロリーの60%を糖質から摂取する偏った食生活をしていると、三大栄養素のバランスをちょっと変えただけでも体調が悪くなるということでしょう。

糖質制限を開始して間もない時期は疲れやすく感じる

米、パン、麺類、イモ類、砂糖の摂取量を減らす糖質制限を開始すると、以前よりも疲れやすくなったと感じる方もいるようです。

私の場合は、糖質制限を始めて間もない時期は、息が上がるような疲れはなかったのですが、筋肉が疲労しやすくなったように感じました。でも、それも最初の頃だけで、2ヶ月かそこらで筋肉は疲れにくくなりました。

それどころか、暑さに強くなるし、息も上がりにくくなるしで、全体的に体が疲労しにくくなりましたね。さらに体重を減らさないように脂質をたっぷりと摂るようになってからは、子どもの頃のように体が元気になってきました。

 

ここからは私の妄想ですが、糖質制限開始直後は、反応(1)の代謝から反応(2)にうまく切り替えれなかったのだと思います。そして、糖質制限の開始から間もない期間に体重が大幅に減少するのは、反応(1)から反応(3)に代謝が切り替わったからなのではないでしょうか?

そして、反応(3)は、体が反応(2)への移行段階にあることを示しているのかもしれません。

もう一度整理すると、反応(3)は身体を構成しているタンパク質を取り崩して、脂質と糖質を作り出しエネルギー利用する反応です。反応(2)は脂質を取り崩して身体を構成するアミノ酸(タンパク質)を作り出す反応です。

この反応(2)と(3)をじっくりと考えると、身体づくりに重要なのは反応(3)であり、脂質をたくさん摂取することが大切なのではないでしょうか?

1回の食事で吸収できるタンパク質の量は20gから40g程度と言われていますので、たくさんタンパク質を摂取したところで、身になりにくいように思います。それなら、脂質を多く摂取して体内で反応(3)が起こりやすい状態にしておいた方が良いと思うのですが。

なお、「栄養学を拓いた巨人たち」については以下の記事も参考にしてください。

参考文献


栄養学は事実を認めるのが遅い。糖尿病の増加は明治時代の脚気の増加と原因が同じ。

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現代の日本では、2千万人の人が糖尿病かその予備軍と言われてます。

糖尿病は生活習慣病とされていますから、普段の食事や運動が原因で発症するということでしょう。それなら、栄養学が発達している現代日本で、こんなにたくさんの糖尿病とその予備軍の人が多いことに疑問を感じます。

白米中心の食事が脚気の原因

現代の糖尿病と同じように社会に流行した病気が明治時代にありました。

それは脚気(かっけ)です。

現代では、栄養学の発達もあり、脚気はビタミンB₁の摂取不足が原因だとわかっています。でも、明治時代は、ビタミンB₁が発見されておらず、脚気の原因が何なのか不明でした。

ドイツで医学を学んだ森林太郎(森鴎外)は、脚気は劣悪な環境と食事によって発症する伝染病だと主張します。これが脚気による犠牲者を増やす原因でした。

一方、イギリスで医学を学んだ海軍医官の高木兼寛は、欧米の軍艦で脚気にかかる水兵がいないのに日本の軍艦では多くの水兵が脚気にかかり死者も出る状況を知って、食事内容に原因があるのではないかと考えます。

そこで、高木兼寛は、日本海軍の食事を洋風にしたところ、長期の航海にも関わらず脚気にかかる水兵が激減し死者も出ませんでした。これについては、帝京大学医学部名誉教授の杉晴夫先生の著書「栄養学を拓いた巨人たち」で紹介されています。

そこで高木はパンの代わりに、白米に大麦を混ぜることにした。これは水兵たちにも受け入れられた。さらに、糖質に偏りタンパク質が少なかった従来の献立をタンパク質を多く含むものに変えてみた。この新しい食事の効果をテストするため、軍艦「筑波」が遠洋航海に出発した。
はたして287日の航海中、333人の乗組員のうち脚気患者はわずか14人、しかも死者は一人もいなかった。この劇的な結果を見て、海軍は直ちに高木案に従って麦飯を柱とする海軍標準食を制定した。こうして海軍を悩ませた脚気は一掃されたのである。(97ページ)

しかし、陸軍では海軍食が採用されず、森林太郎の白米食に問題なしという報告を信じて日露戦争に突入します。

すると、陸軍の戦死者4万7千人に対して、脚気患者は21万人以上、脚気での死亡者が2万7千人を超えるという事態が発生しました。

事実は権威に逆らえない

この例を見るとわかりますが、どんなに病気の予防に効果的だとする事実を積み上げて行っても、権威者がその事実を認めなければ、医療の現場で採用されなかったのです。

欧米では、ビタミンBが発見されて脚気の治療に効果的だと広く認められていきましたが、日本では、森林太郎が1922年に亡くなるまで脚気は細菌が原因だとする説に逆らえず、多くの犠牲者を出します。でも、森林太郎の死後は、ビタミンBが有効であることを栄養学や医学の世界で認めるようになり、それまで細菌説を支持していた学者たちも沈黙したそうです。

糖質制限で血糖コントロールできるのは事実なのに認められない

現代の糖尿病治療も、明治時代の脚気の治療と全く同じです。

実際に米、パン、麺類、砂糖といった炭水化物(糖質)を多く含む食品を食べなかったら血糖値が上がらないのですが、その事実はなかなか認められません。いや、事実なのですから認めるしかないのですが、糖質制限が社会になかなか認知されません。

やっぱり、これも事実は権威に逆らえないことが理由なのでしょうか?

どんなに優れた治療法を発見しても、誰が発見するかで、患者が効果的な治療を受けれるかどうかに大きく影響しているように思いますね。有名国立大学の偉い先生が発見した治療法なら、すぐに医療の現場で採用されるのでしょうが、小さな病院の臨床医が発見した治療法は、なかなか世間に浸透しないのでしょう。

 

「栄養学を拓いた巨人たち」では、食事内容を変えて病気が治ったという事例がいくつも紹介されているのですが、必ずと言っていいほど、それを認めない旧勢力に新発見がつぶされそうになります。ミルクの代替食を与えて多くの乳幼児を死亡させた事例から、糖質、脂質、タンパク質の三大栄養素だけでは人は生きていけないことを論文で発表して、栄養学のドグマに跳ね返されたという事例も紹介されていました。

今なら、ビタミンとミネラルも必須の栄養素だとわかっているので、三大栄養素だけでは生きていけないことは明らかです。

でも、杉先生によると、このようなことは現代でも常に起こっているそうです。

なお、「栄養学を拓いた巨人たち」については、以下の記事でも紹介しています。

参考文献

2型糖尿病が完治することがあるのか?

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正月は、ついつい暴飲暴食をして太ったという方もいらっしゃるでしょう。

たまには、そうやって破目を外すのも良いでしょう。でも、これが毎日になると、肥満を原因とした様々な生活習慣病になってしまいますから、気を付けなければなりませんね。特に糖尿病になると、完治しないと言われていますから、糖質の摂り過ぎには注意しましょう。

ところで、悪い食習慣が原因と言われている2型糖尿病が完治したということをたまに聞くことがあるのですが、そんなことがあり得るのでしょうか?

1型糖尿病と2型糖尿病

糖尿病は、高血糖の状態が続く病気で、それを原因として様々な合併症が発症します。失明したり、腎臓が悪くなったりするのが合併症の例です。

人間は、血糖値が上がると、すい臓のβ細胞からインスリンが分泌されて筋肉や脂肪組織に血糖が取り込まれて血糖値を正常な範囲にまで下げます。

でも、糖尿病になると、うまく血糖値を下げれなくなります。なんらかの原因ですい臓が機能しなくなって発症する糖尿病を1型糖尿病と言います。また、インスリンは分泌されるけども、分泌量が少なかったり、血糖を筋肉や脂肪組織にうまく取り込めなくなったりするのを2型糖尿病と言います。

1型糖尿病は、すい臓が機能していないので、血糖値を下げるためにはインスリンの投与が必要になります。

でも、2型糖尿病の場合には、すい臓の機能が完全に失われていないので、食事に気を付けたり適度に運動して生活習慣を改善すれば、合併症を予防できるとされています。

インスリン抵抗性とインスリン分泌能低下

2型糖尿病になると、インスリン抵抗性が亢進したり、インスリン分泌能が低下したりします。

インスリン抵抗性は、すい臓からインスリンが分泌されているけども、筋肉や脂肪組織が血糖を取り込むのを拒否している状態です。簡単に言うと、太りすぎて、これ以上血糖を取り込めるだけの空き容量が不足している状態です。

例えるなら、パソコンのハードディスクがいっぱいになって、デジカメで撮影した写真を保存できなくなっている状態ですね。この場合、ハードディスク内の不要なファイルを削除すれば、デジカメで撮影した写真をパソコンに保存できます。

これと同じで、インスリン抵抗性が亢進している場合には、痩せることで血糖を取り込める空き容量を増やせます。

一方のインスリン分泌能低下は、すい臓の機能は失われていないけども、糖質過多の食生活により、これまで多くのインスリンを分泌し続けていたすい臓が疲れてしまい、インスリンの分泌量が少なくなっている状態です。すい臓は、一度壊れると再生できない臓器です。なので、インスリン分泌能が低下していると、すい臓の機能が健常者よりも悪くなっていると言えますから、回復は容易なことではないでしょう。

インスリン抵抗性の改善なら2型糖尿病の完治はあり得そう

もしも、インスリン抵抗性が亢進しているけども、インスリン分泌能が低下していないのであれば、2型糖尿病の完治はあり得るかもしれません。

この場合、血糖を取り込めるだけの空き容量を確保すれば良いのですから、運動やカロリー制限によって減量できれば、血糖を処理できます。2型糖尿病の方に適度な運動、カロリー控えめの食事が推奨されるのは、脂肪組織に空き容量を確保することが目的なのですね。

これに関しては、京都高雄病院の江部康二先生のブログで事例が紹介されています。

インスリン分泌能低下なら改善すべき食生活が違うはず

しかし、インスリン分泌能低下だと、適度な運動やカロリー制限では、2型糖尿病の完治は無理でしょう。

なぜなら、インスリンの分泌量が健常者よりも少ないからです。

このような状況で、健常者と同じ量の糖質を摂取していれば、健常者よりも食後高血糖が長く続くことは容易に想像できます。したがって、インスリン分泌能が低下している2型糖尿病の方は、糖質摂取量を控えて、少ないインスリンの分泌量でも血糖値が上がりすぎない食事にしなければならないはずです。

なので、インスリン分泌能低下に対しては、糖質制限が有効な食事になると思うわけです。

インスリン分泌能低下であれば2型糖尿病の完治は難しい

さて、2型糖尿病が完治したという人がたまにいますが、おそらく、この人はインスリン抵抗性が亢進しているだけでインスリン分泌能が低下していなかったのでしょう。

そして、運動やカロリー制限で脂肪組織の空き容量を増やせたので、血糖値が健常者と同じ水準にまで改善したのだと思います。

しかし、すい臓の機能の一部が失われてインスリン分泌能が低下している2型糖尿病の方が、完治することは難しいでしょう。江部先生も述べていますが、一生治らない糖尿病とはインスリン分泌不足が主たる原因の糖尿病だからです。

 

運動やカロリー制限でインスリン抵抗性が改善された方が、インスリン分泌能低下を原因とする2型糖尿病の方に対して、根性が足りないとか精神力が弱いとか言うことがあります。でも、そもそも、2型糖尿病を発症した原因が違うのですから、気合や根性でどうなるものでもありません。

SNS、ブログ、掲示板などで2型糖尿病が完治したと言っている方が、インスリン抵抗性の亢進かインスリン分泌能低下か、どちらを原因として糖尿病を発症したのかを見極める必要がありますね。

炭水化物は推定平均必要量も目安量も設定されてないのに食べる必要があるらしい

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厚生労働省が公表している日本人の食事摂取基準2015年版では、炭水化物は総摂取カロリーの50%から65%になるように食べましょうとされています。

炭水化物の摂取カロリーは、何か理由があって設定されているのだろうと思い、日本人の食事摂取基準を少しばかり読んでみました。すると、なかなか興味深いことに気づきました。

ブドウ糖の1日の必要量は100グラム

日本人の食事摂取基準2015年版では、ブドウ糖は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、骨格筋等のエネルギー源になると記載されています。そして、脳の1日のブドウ糖必要量は75グラムで、その他も合わせると少なくとも100グラムはブドウ糖が必要になるそうです。

しかし、ブドウ糖は、肝臓で乳酸、アミノ酸、中性脂肪の分解産物であるグリセロールから作り出せるので、ブドウ糖100グラムは真に必要な最低量ではないとのこと。

そのため、この量を根拠として推定必要量を算定する意味も価値も乏しい。さらに、炭水化物が直接ある特定の健康障害の原因となるとの報告は、後述するように、生活習慣病の一種としての糖尿病を除けば、理論的にも疫学的にも乏しい。そのため、炭水化物については推定平均必要量(並びに推奨量)も耐容上限量も設定しない。同様の理由により、目安量も設定しなかった。(144ページ)

炭水化物には、推定平均必要量も耐容上限量も目安量も設定されていません。だから、普通に考えると炭水化物を食事から摂取する必要はないとなるはずです。

脂質の摂りすぎは生活習慣病の恐れがある?

それなら、1日に必要なカロリーは脂質やタンパク質だけで賄っても良さそうに思うのですが、どうもそうではないようです。

脂質の摂り過ぎが冠動脈性心疾患のリスクを高めるとされているからです。

低脂質/高炭水化物食は食後血糖値及び空腹時トリアシルグリセロール(中性脂肪)値を増加させ、血中HDL コレステロール値を減少させる。健康な人において、このような食事をしても、動脈硬化症、肥満、糖尿病が増加することを示す報告はないが、長期間にわたってこのような血中脂質パタンが続くと、冠動脈性心疾患のリスクが高くなる。(112~113ページ)

日本人の食事摂取基準2015年版では、飽和脂肪酸(動物性脂肪)摂取量と心筋梗塞罹患との間に強い関連が認められないという記述も見られますが、脂質の摂り過ぎは健康に良くないという立場のようです。

炭水化物摂取量は差引計算

脂質の摂取量が多くなると生活習慣病が懸念されることから、日本人の食事摂取基準2015年版では脂質の目標量は総エネルギー量の20~30%とされています。タンパク質についても、総エネルギーの13~20%という目標量が設定されています。

では、炭水化物の目標量はどのようになっているかというと、総エネルギー量から脂質と炭水化物の摂取割合を差し引いて計算しています。

脂質の下の値20%とタンパク質の下の値13%を足すと33%です。総エネルギー量100%から33%を差引くと67%となり、これが炭水化物の摂取量の上の値となります。しかし、精製度の高い穀類や甘味料や甘味飲料、酒類は数多くのミネラル、ビタミンの含有量が他の食品に比べて相対的に少ないことから、上の値よりもやや少ない65%を炭水化物摂取量の上の値として設定したようです。

また、炭水化物摂取量の下の値は、脂質の上の値30%とタンパク質の上の値20%を合計した50%を総エネルギー量100%から差し引いた50%としています。

このように炭水化物の1日の摂取量は、差引計算で導き出されたものであり、炭水化物の必要量を直接導き出したものではないのです。炭水化物の1日の摂取量を差引計算で求めたのは、炭水化物は健康に悪い影響を与えないだろうという考え方が根底にあるからのようですね。

炭水化物は菌血症の原因になる

炭水化物、脂質、タンパク質の三大栄養素の摂取割合を変えようと思うと、それぞれを摂取する利点と欠点が明らかにされていかなければならないでしょう。

炭水化物の摂取が体に悪いとなれば、摂取割合は総エネルギー量の50%より低くなるでしょう。また、脂質が体に悪い影響を及ぼさないということが分かってくると、脂質の摂取割合は30%よりも多くなるはずです。

日本人の食事摂取基準は5年に1回改訂されるので、その間に研究が進めば、三大栄養素の摂取比率が変わるかもしれませんね。

今後、炭水化物の摂取割合は低く設定されていくと思います。その理由の一つは、炭水化物摂取が菌血症を起こすことが分かってきているからです。

菌血症は、血液の中に細菌が入り込んだ状態のことで、動脈硬化の原因になります。歯科医の花田信弘先生の著書「白米が健康寿命を縮める」によると、血液への細菌の侵入は口と腸の両方が考えられていたのですが、DNAシークエンスという技術の登場で、口の中の細菌が血液に侵入していることが分かったそうです。

口からどうやって細菌が血管に侵入するのか?

その答えは、歯周病や虫歯です。どちらも炭水化物を食べることで起こる疾患です。歯と歯茎の間から体内に侵入した細菌が、血管に炎症を起こし、それを治すためにコレステロールが必要になります。

LDLが悪者扱いされた理由は、動脈硬化を起こした血管を調べたところ、そこにLDLコレステロールが見つかったからです。それによって、「LDLコレステロールこそが、動脈硬化の犯人だ」と誰もが思うようになってしまったのですが、じつは動脈硬化の本当の犯人は、血管に起こる炎症だ、ということがわかってきました。LDLコレステロールは、その炎症による血管の損傷を修復するために、細胞膜の材料を届けにきていただけだということがわかってきたのです。(37ページ)

このように炭水化物摂取により菌血症が進み、慢性炎症が発生して動脈硬化になると分かってきていますから、炭水化物の摂取量は少なくした方が良いですね。

参考文献

喫煙率低下と肺がん死亡数増加の理由は炭水化物摂取量減少と糖尿病患者数増加にも当てはまる

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2015年12月11日の朝日新聞に「グラフによれば、たばこは無害?」という記事が掲載されていました。

日本人の喫煙率は年々低下しているのですが、肺がん死亡数は増加する傾向にあったことから、たばこと肺がんとの間に因果関係はないという主張があります。でも、上記記事によると、これは統計を使ったごまかしだということです。

そして、炭水化物の摂取量が減っているのに糖尿病と糖尿病予備軍の数が増加しているから、炭水化物と糖尿病との間に因果関係はないと主張する人たちも、このごまかしを使っています。

グラフの期間を長くとれば喫煙率と肺がん死亡者数は相関する

私は、たばこと肺がんに因果関係があるのかどうかは知りません。世の中では、両者は関係あるとされていますから、そうなのだろうと思っている程度の知識でしかありません。

なので、たばこの何が体にどう影響して肺がんになるのかはわかりません。

でも、喫煙率の低下と肺がん死亡数の増加には因果関係がないとする主張がおかしいことはわかります。朝日新聞の記事では、下のような「X」型のグラフが紹介されていました。

喫煙率と肺がん死亡数の推移

このグラフを見ると、確かに喫煙率と肺がん死亡数は比例していません。むしろ、喫煙率が低下しているのに肺がん死亡数が増えているのですから、たばこを吸わないと肺がんになるという主張も成り立ちます。

しかし、グラフの時間軸を長くとると、喫煙率と肺がん死亡数は相関関係にあることがわかります。

喫煙率と肺がん死亡数の長期推移

朝日新聞の記事が言いたいことは、喫煙による悪影響は長い時間をかけて現れるということです。そして、グラフの時間軸を短くして見ると、あたかも喫煙率と肺がん死亡数が反比例しているように見えるので、真逆の結論を導き出してしまう危険があるのです。

炭水化物摂取量は減っているが糖尿病とその予備軍は増えている

日本人の炭水化物の摂取量は年々減少しています。

厚生労働省が公表している「国民健康・栄養調査」を見ると、国民1人当たりの1日の炭水化物の摂取量を調べることができます。1955年から2010年まで5年間隔で国民1人当たりの炭水化物摂取量を表にしました。

日本人1人当たり炭水化物摂取量の推移

5年単純平均(kg)は、例えば、1955年と1960年の場合は炭水化物摂取量を2で割った148kgとなります。1960年と1965年との5年単純平均は143kgです。1年ごとに数字を取得するのが面倒だったので、5年単純平均を計算しました。

この1年間の炭水化物平均摂取量を基にして、日本国民が生涯にどれだけの炭水化物を摂取しているのかを推定してみました。なお、1955年以前は1955年の150kgを毎年の炭水化物摂取量と仮定し、それ以降の期間は5年単純平均を用いて計算しています。また、2000年の男性の炭水化物摂取量は平均値よりも約9%多く、女性は約9%少なかったので、全期間で9%の調整をして計算した結果も掲載しています。

生涯炭水化物摂取量の推移

男性の場合、1955年の平均寿命が64歳です。そして、64歳までの炭水化物摂取量は10,470kgと推定されます。その後、男性は、平均寿命まで生きた場合、右肩上がりで炭水化物摂取量が増えていき、2000年から減少し始めています。

また、女性の場合は、1955年の平均寿命が68歳です。この年の平均寿命まで生きた場合の炭水化物摂取量の累計は9,287kgと推定されます。女性も男性同様に一生涯での炭水化物摂取量は増加傾向にあり、2010年で減少しています。

このように国民1人当たりの炭水化物摂取量は、単年度では減少していますが、近年まで一生涯の累計では増加傾向にありました。そして、糖尿病と糖尿病予備軍の数も増加傾向にありますから、両者はそれなりに相関関係があると言えそうです。

糖尿病の年代ごとの割合

次に糖尿病と糖尿病予備軍の年代ごとの割合を見てみましょう。

まずは男性です。

糖尿病と糖尿病予備軍の年次比較(男性)

70歳以上の糖尿病とその予備軍の割合は、1997年が22.6%だったのに対して2012年は40.9%まで上昇しています。70歳以上の男性はほぼ2人に1人が糖尿病かその予備軍なので、この数は深刻ですね。

しかし、30代では、1997年が6.1%、2012年が3.2%と約半分にまで減少しています。40代と50代も微減です。

60代から糖尿病と糖尿病予備軍が増えているのは、1997年時点での40代と50代の糖尿病予備軍の方が2012年時点で60代以上になっていることが理由でしょう。

 

女性の場合は、1997年と比較して2012年は30代と40代の糖尿病と糖尿病予備軍の割合が減少しています。特に40代では糖尿病が5.4%から1.7%まで大きく減っています。

糖尿病と糖尿病予備軍の年次比較(女性)

女性は男性よりも糖尿病と糖尿病予備軍の割合が全体的に小さくなっています。女性の方が健康を意識しているからなのかもしれません。ただ、30代では男性よりも女性の方が、2012年時点で糖尿病と糖尿病予備軍の割合が大きくなっています。妊娠糖尿病になる方もいるでしょうから、その影響も考えられます。

若い世代で糖尿病と糖尿病予備軍が減っている

1997年と2012年の糖尿病と糖尿病予備軍の割合の比較で興味深いのは、30代で糖尿病と糖尿病予備軍が減少していることです。特に女性は40代でも減少傾向にあります。

これはどういうことなのでしょうか?

考えられる理由はいろいろあるでしょう。

炭水化物摂取量が減少しているということも、その一つでだと思いますね。

炭水化物の大部分は、血糖値を上げる糖質です。糖尿病は、高血糖の状態が続く病気です。その原因は血糖値を上げる糖質の頻回摂取、血糖値を下げるインスリンを分泌する能力が弱くなっていることが原因とされています。

そして、糖質を多く摂取したり、頻回に摂取していると、すい臓が疲れてきてインスリンを分泌できなくなると言われています。

若い時から炭水化物をたくさん食べていた世代は、30代で糖尿病と糖尿病予備軍の割合が高く、若い時に炭水化物の摂取量が少なかった世代は30代での糖尿病と糖尿病予備軍の割合が低くなっています。

炭水化物の摂取量と摂取回数が増えるほど、糖尿病になりやすいと予測できそうです。

統計に納得しない

ここまで読まれた方は、糖尿病の原因は糖質の過剰摂取だと思ったのではないでしょうか?

でも、脂質やタンパク質の摂取量も、きっと増加傾向にあるはずです。だから、脂質の摂り過ぎが糖尿病の原因、タンパク質の摂りすぎが糖尿病の原因という結論を導き出すことも、統計を使えば可能です。

統計で導いた結論は妄想ですよ。

統計よりも、糖質、タンパク質、脂質を食べると体の中でどういった反応が起こるのかを勉強する方が大切でしょう。

 

直接血糖値を上げるのは糖質だけ。

これを知っていれば、米、麦、砂糖など、糖質が多い食べ物を控えることが糖尿病の予防に有効だとわかると思うのですが。

糖尿病になると心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症率と死亡率が高くなる

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糖尿病は、高くなった血糖値を下げることができなくなる病気で、高血糖の状態が続くと様々な合併症を併発します。

糖尿病の合併症には様々ありますが、その中でも心筋梗塞などの冠動脈疾患は、命にかかわる危険な病気です。糖尿病ではなくても冠動脈疾患を発症することはありますが、糖尿病になると、その発症率や死亡率は極めて高くなります。

2型糖尿病者の冠動脈疾患発症率は約6倍高い

インターネットで検索していると、「月間糖尿病」の2010年7月号の「糖尿病と冠動脈疾患の疫学」というページの一部が出てきました。

この特集記事を執筆されたのは、東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科の西村理明先生です。

記事の中では、フィンランドで行われた「Finish Study」という糖尿病がもたらす冠動脈疾患の危険度について、具体的な大きさを検討した研究内容が掲載されていました。

2型糖尿病者と非糖尿病者をあわせて約2,400人を対象として7年間追跡調査したものです。過去に心筋梗塞になったことがあるかないかでも分けられており、そのグラフが示されていました。以下は、そのグラフから作った表で、内容は上記特集記事に掲載されているものと同じです。

糖尿病と心筋梗塞発生率
心筋梗塞既往なし 心筋梗塞既往あり
非糖尿病者 3.5% 18.8%
2型糖尿病者 20.2% 45.0%

この表を見ると明らかなように2型糖尿病者は非糖尿病者よりも、心筋梗塞を発症する確率が高くなっています。心筋梗塞既往のない2型糖尿病者は20.2%となっており、心筋梗塞既往のない非糖尿病者との比較で約6倍高いです。

心筋梗塞既往のある非糖尿病者が再び心筋梗塞を発症する確率が18.8%ですから、2型糖尿病の方は過去に心筋梗塞になったことがなくても、心筋梗塞既往のある方と同じくらい発症する危険があるということですね。

心筋梗塞での死亡率は2型糖尿病者の方が高くなる

さらに上記研究の対象者を18年間経過観察した内容のグラフも掲載されていました。

そのグラフには18年間の累積死亡率が示されています。

男性の場合、冠動脈疾患既往のない2型糖尿病者の累積死亡率は40%近くあるのに対して、冠動脈疾患既往のある非糖尿病者のそれは25%ほどとなっています。

女性の場合は、冠動脈疾患既往のない2型糖尿病者の累積死亡率は35%ほどあるのですが、冠動脈疾患既往のある非糖尿病者だと5%を超えている程度しかありません。

男女どちらでも糖尿病になると、心筋梗塞での死亡率は、心筋梗塞既往歴のある非糖尿病者よりも高くなっています。おそらく、糖尿病と診断された時点で、冠動脈疾患既往のある非糖尿病者よりも血管が傷んでいるのでしょうね。

日本国内での研究でも糖尿病者は冠動脈疾患発症率は高い

西村先生の特集記事では、日本での糖尿病と冠動脈疾患発症率との関係についても掲載されています。

1996年4月より行われたJDCSというもので、日本人2型糖尿病患者2,205人を対象とした生活指導の効果を検討する前向き研究で、冠動脈疾患(狭心症と心筋梗塞)と脳卒中の発症率やリスク因子を検討したものだそうです。

なお、登録時の対象者の平均年齢は59歳、平均罹病期間は11年です。

研究結果によれば、7年間で心血管疾患発症率は1,000人年あたり虚血性心疾患8.0、脳卒中7.4とのこと。9年次中間報告で1,000人年あたりの冠動脈疾患発症率は9.6、脳卒中は7.6であり、それぞれ一般住民の約3倍、約2倍だったそうです。

西村先生は、「日本人においても糖尿病に罹患すると,冠動脈疾患の発症率は確実に欧米人の値に近づきつつあることが示されている」と結論を述べています。

心筋梗塞の原因

心筋梗塞は、アテローム性動脈硬化が原因とされています。

アテローム性動脈硬化は、傷ついた血管の内側の壁を修復する際にできるアテローム性プラークが大きくなることで起こります。アテローム性プラークは、簡単に言うと、かさぶたのようなものです。このアテローム性プラークが大きくなって血管をふさいでいくのがアテローム性動脈硬化です。

そして、心臓の近くで血管がふさがると心筋梗塞、脳の近くでふさがると脳梗塞となります。

お餅をのどに詰まらせると窒息死することがありますが、心筋梗塞や脳梗塞もこれと同じように発症すると急死する危険性が高い病気です。糖尿病は心筋梗塞の危険性を高めますから、日頃から糖尿病には注意しなければいけませんね。

歯科医の花田信弘先生は、著書の「白米が健康寿命を縮める」の中で、アテローム性動脈硬化の原因について以下のように述べています。

アテローム性動脈硬化は、血管内皮細胞がくり返し損傷を受けることで起こります。
この損傷のリスク因子としては、一般的には高血圧、タバコの煙、糖尿病、高い血中コレステロール値などが指摘されていますが、私としてはじつは、歯周病患者に日常的に生じている歯原性の菌血症がその大きなリスク因子になっていると声を大にして主張したいのです。(40ページ)

歯周病になると、歯茎が常に炎症を起こした状態になりますから、そこから侵入した細菌が血管にも炎症を作り、アテローム性動脈硬化を引き起こします。だから、歯の手入れは、歯周病だけでなく心筋梗塞の発症を予防するためにも、とても大切です。

そして、花田先生は、糖質を摂取すると血糖値が上がって血管を傷めるグルコーススパイクも起こすことを指摘しています。

著書のタイトル通り、白米を常食することで健康寿命が縮むわけですね。

参考文献

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